more than a SCORE

1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

第72回 阪神ジュベナイルフィリーズ

ソダシが僅差で2歳チャンピオンとなりました。

先行集団で上手くストライドを詰めて追走した道中。クロフネのダイナミックなフォームにストライドを詰めて活きるイメージはあまりないのですが、力を温存しながらの追走ができていたように見えています。内枠で前を壁にすることになった分、前走アルテミスSより窮屈ではあったでしょうか。

直線に向いて前をクリアにしてからはしぶとくスピードを維持していました。吉田隼人も慌てない騎乗ぶり。ラスト1ハロンでサトノレイナスがインに切れ込みながら追撃してきましたが、これをギリギリしのぎ切っての勝利となりました。

 

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2020年阪神ジュベナイルフィリーズ、ゴール手前で粘り込むソダシ

白毛のG1勝利というクローズアップはもちろんですが、吉田隼人のG1勝利というのも今年の競馬の特徴のひとつと受け取っています。

公式レースラップ

12.4-10.8-11.7-11.9-11.9-11.2-11.4-11.8

クッション値と含水率

2020-12-13 阪神芝コース
クッション値 10.1
含水率:ゴール前 12.1
含水率:4コーナー 9.6

ヨカヨカの逃げは抑制的

スタート直後、どれが逃げるんだ?という間があって、ヨカヨカが相対的に主張。このあたりは福永の想定内だったでしょうか。外枠のポールネイロン藤岡佑介が早々に控え、内のサルビアもかかり気味を抑えにかかり、抑制されたペースがほぼ確定しました。

ポールネイロンの控える姿はちょっと消極的に映っていたのですが、外のエイシンヒテンを避けるような仕草が見えてからジョッキーが手綱を引いていますので、ちょっと怖がりなのかもしれません。そうすると、我慢をさせたというレース後のコメントとも合致する面がありそうです。

ソダシとサトノレイナス、直線の進路確保までに勝負の綾

ポールネイロンの直後でポジションをキープしたソダシ。そのポールネイロンが膨らまずにコーナリングし切ったことで、直線に向いてひとつ外のエイシンヒテンの後ろに。

吉田隼人はそのままエイシンの外に展開しようとしたのでしょう、左の手綱を1回大きく手繰っています。ただその瞬間に外からインフィナイトが。これで外へ抜ける間隔がなくなりました。

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2020年阪神ジュベナイルフィリーズ吉田隼人がソダシの左手綱を手繰る瞬間

そこでポールネイロンとエイシンヒテン、オレンジ帽の間へ。今度は右の手綱を手繰ってソダシをインへ誘導します。これで前方がクリアになりました。

ここで割を食ったのがサトノレイナス、というよりルメールの判断の速さ。ソダシの直後に付けたことで、あとは直線で進路を確保するだけという展開でした。

それだけ吉田隼人の挙動に敏感な状態にあったと思いますが、相手と逆の進路を取るために鋭敏に反応しようとした結果、インかアウトか迷う時間が生じてしまったように見えています。

ソダシは大きくアウト→インとポジションを移動していますが、ルメールはひとつ先を読んでいる分、まずインの可能性を探り→アウトに切り替え→やっぱりインへ加速するが割って入れず→アウトの可能性を探り→ソダシが外に膨れるさまを見て再びイン、という細かい切り替え。これでようやく前方が開けるわけですからなかなか時間を要してしまいました。

でもルメールの反応は凄いですね。ソダシは直線半ばで左鞭を受けてから左(=アウト)に流れる通常とは逆の反応を示しました。この挙動を見てインにハンドルを切るのですから、さすがの観察力というべきでしょう。

おそらく最後まで外目に進路を取る可能性を探っていたのかなと。その可能性を捨ててインから勝負をかけたのだとすると、観察眼、相当切れていますね。

白毛のG1勝利

おそらく世界初。おそらく、という断定しない報道にはて?と思っているのですが、どこまで記録を遡って確認できるものでしょうかね。12/14夜の時点で、JBIS-Searchで検索できた白毛は59頭。この中にはG1馬はいませんでした。

www.jbis.or.jp

ちなみに、シラユキヒメを祖とする白毛は本馬を除くと20頭でした。以下のページで確認できますが、ちょっとお遊びを。ページ内検索機能(キーボードの「Ctrl」と「F」を同時に押すと検索窓が出ます)を使い、「白毛」の文字で検索して、「すべて強調表示」というボタンを押してみてください。白毛という文字がハイライト表示されます。なかなか壮観ですよ。

www.jbis.or.jp

世界的に珍しいのは間違いないですものね。RacingPostでもG1勝利の記事がアップされていました。母のブチコを「Buchiko, a coloured mare who had a mind of her own on the track」と表現しているのはなかなか味わい深く。コース上で自分なりの考えを持っていた、というニュアンスでしょうか。きっと筆者はあのゲート難の映像をどこかで観たのでしょうね。

www.racingpost.com

吉田隼人のオリジナルなポジション

ゴールドアクター以来のG1勝利。という以上に今年の活躍はかなり特徴的と思っています。

netkeibaのデータ分析、粒度がちょうどよかったです。関東リーディング2位という認識はありましたが、今年の吉田隼人、競馬場別のデータを見ると中山0勝(年間で騎乗は5回)というかなり特徴的なバイアス。小倉>福島という騎乗回数、勝ち鞍最多は新潟、騎乗数最多は中京というのもかなり特徴的でしょう。

関西に拠点を移した分、依頼は久保田厩舎以外、関西が中心。騎乗依頼数は須貝厩舎がトップ、勝利数は須貝厩舎、友道厩舎が並んでトップ。ソダシは須貝厩舎ですから、このあたりは符合するところです。

3場開催の際に優先順位があがっている、という分析もできるでしょうか。この東西の垣根をあまり意識させない起用がひとつの成功事例となっているように思います。ちゃんと調べていないのですが、2011年頃の田辺は多少似た傾向があるかもしれません。違ったらすみません。

ソダシの3勝を含めて重賞6勝。レッドアネモスのクイーンSはお見事でしたものね。今後の馬回り次第という面はありますが、来年も楽しみになってきました。

サトノレイナスは今後が楽しみな2着

阪神マイルで中団からなら、と思っての本命でした。思った通りソダシの後ろからでしたが、捕まえきれなかったかー。

でも距離が伸びてよさそうですし、初の関西輸送も3戦目というキャリアも無事にクリアしてくれました。来年のクラシックが楽しみですね。

ユーバーレーベンはタフな末脚で3着

上がり3ハロンがずっと減速ラップですから、末脚の持続力が問われる展開だったと推察します。であればユーバーレーベンは買っておくべきですよね。デムーロの4コーナーまでのエンジンのかけ方、溜め方はお見事でした。そういえばリオンディーズで朝日杯を制した時も後方一気。そのリズムを忘れていました。リピーター?

府中の敗戦で評価を下げてしまったのが悔やまれますが、これでだいぶ特徴が掴めてきたかな。次は評価を間違えないようにしたいです。…そうそう、祖母マイネヌーヴェルと確認して「あー」と仰け反るタイミングも遅かったですね。

メイケイエールはやっぱりかかって4着

スタートからファーストコーナーまでの進路、インに寄せずまっすぐ走らせるとこうなりますよね。相当気性に配慮したのでしょう。でも3コーナーにはいってから、やっぱりかかってしまいました。他馬がスロー気味に溜めている中でのロスですので、なかなかに厳しい展開になりました。

直線いったんは抜け出しましたが、やはりラストの坂で止まった印象。それでも0.2差の4着ですから大善戦でしょう。

少しずつ折り合いを伝えている最中。来春はもう少し折り合いがつくようになるでしょうか。他馬と同等の折り合いなら本命視したかったことは書いておきます。

馬体が膨らんでくるはずなんですよね。こちらも春までの成長が楽しみです。

最後に

残念ながら今年は香港国際競走をまとめる余裕がなさそうです。ざっと振り返ると、かなり速い馬場だったことが特徴的だったでしょうか。札幌とのコンディションの近似を示唆するツイートも目にしました。実際、ダノンスマッシュ、ノームコアと札幌重賞を制した馬が勝利を手にしていますからね。

何より、コロナ禍でかつ香港の政情もあり、厳しい状況下での遠征で2勝、ラストランのウインブライトは2着、アドマイヤマーズ、ダノンプラチナムも粘ってくれました。日本勢、大健闘と思います。

香港三冠馬ゴールデンシックスティの強さは凄いですね。来年はドバイでライバルになるのかな。一方でグローリーヴェイズが出ていたら今年もヴァース行けたのでは?という雑な感想も持っております。

やっぱり日本と香港のG1が同時刻というのは何とか調整してほしいところ。どうしても香港スプリントは予想に時間をかけられない分、金額も控えめになってしまいました。必ず日本馬が出るとは限らない分、そもそもコストをかけて調整するのも難しいと推察はしているのですが。どちらのレースも堪能したいですからね。