グランアレグリア、鮮やかな追い込みでスプリントG1を制しました。
残り1ハロンからのコントラストは凄かったですね。逃げ馬が競り合ってバテた分、待機勢の追い込みが決まりやすい展開にはなりましたが、それにしても映えました。以下はちょうどラスト1ハロン直前、ルメールが大きく左鞭を振り上げた瞬間です。
出負け気味のスタートになった際は「終わった」と思いましたが、ルメールはあわてず騒がず、あのポジションからできることに終始していたようです。見たまま、後半が速くなる後傾ラップですので、緩い3コーナーを助走区間として利用していたのは理解できます。
詳しくはmahmoudさんの個別ラップなどに委ねるところですが、前後3ハロンは34.7-33.6。高松宮記念のグランアレグリアは35.6-33.1ですから、春の方がより後傾ラップですね。
グランアレグリアの平均完歩ピッチ推移。暫定版個別ラップは12.9-10.8-11.1-11.4-11.1-11.0。ルメール騎手が落ち着いて深追いしなかったのがポイントだが、高松宮記念より遥かにパフォーマンスが高い。アーモンドアイを打ち破った延長線上でのレースだ。 pic.twitter.com/4UMurW0tDA
— Mahmoud (@mahmoud1933) 2020年10月4日
ポイントはモズスーパーフレアが逃げる前半を、後方2番手で助走区間として利用する鞍上の戦略と胆力でしょう。よくあの前半を慌てずに進められすよね。。。当日9Rサフラン賞、サトノレイナスで差し切っていますが、こちらも後方2番手。ここでトラックバイアスをつかんでいた、と言えるのかもしれませんが。
鞍上がレースの瞬間瞬間をどう見ているのか、どのレースでもそうではありますが、改めて重要だなと思った次第です。もちろん今回は鞍下の豪脚ありきですよね。
公式レースラップ
11.9-10.1-10.8-11.5-11.9-12.1
クッション値と含水量
クッション値 | 10.4 |
---|---|
含水率:ゴール前 | 11.9 |
含水率:4コーナー | 10.7 |
松若の素直さ、モズスーパーフレアの素直さ
抜群のスタートから11.9-10.1。他馬にとってはオーバーペースとなるラップメイクでしょう。ラブカンプーも3コーナー手前で番手に切り替える形をとっていました。
ゲート入りをごねて出走停止1カ月となったビアンフェ。藤岡佑介はスタートからプッシュしていきましたが、これはメンタル面に配慮しようとしたやむを得ない選択だったかもしれません。単騎逃げに持ち込めば他馬からのプレッシャーは減る可能性がありますので。…初めから逃げる作戦だったかもしれませんが。
松若は前傾ラップにする意図だったでしょう。ただ、高松宮記念でもそうだったように、中間で一度力まない、ニュートラルなスピードで落ち着かせる区間を作りたかったのではないかと推察しています。ビアンフェはその間を与えてくれませんでした。
前傾ラップとしては常識にかなう数値なのですが、松若がイニシアティブを取れていたのか、取りにいく意思があったのかが気になりました。もうひとつ、例えば最初の1ハロンをコンマ1秒でも縮めるリスクを負うのと引き換えに、少し大げさに手綱を動かして他馬をけん制するなど。…外野が言うほど易くはないのでしょうが、最初の数秒間で藤岡佑介を躊躇させる挙動はなかったように思えていまして。
以下は、松若が首を振って外を確認した瞬間をスクリーンショットで取ったもの。カメラの角度もありますが、おおよそ2頭は並んだ位置関係。スタートから10秒の地点ですので、それまでに藤岡佑介は先手を取る選択していることになります。
…逆であってほしかなったなと。藤岡佑介がインに首を振って、松若を窺っている姿が観たかったですね。…松若が窺わせる姿、と言い直しましょうか。
結果として3コーナーから息のはいる場面がつくれず、4コーナーまで被せられたことで馬場の悪いインに閉じ込めらる形で直線を向いてしまいました。ダノンスマッシュが選んだラインのひとつ内くらいまで出せていたら。そのためにはスタートから単騎で立ち回ることが必要でしょう。わずかでも後手に回ってしまったことが松若の敗因、というのが自分の見立てです。
グランアレグリアは次走マイルチャンピオンシップ
馬体は少しゆったりつくられている印象でした。馬体重にも表れていましたね。既報のままでしたらこのあとはマイルチャンピオンシップ、再び距離延長ですから待機策も妥当な布石となりました。今年は阪神での代替開催、桜花賞で実績のある舞台になります。いや、1ハロン短いですが阪神カップのほうが強烈な印象がありますね。
インディチャンプ、サリオスあたりが強力なライバルになるでしょうか。このパフォーマンスを見るとグランアレグリア優位かな、という気がしてしまいます。あの豪脚を前提に予想に臨めるわけですから、贅沢な楽しみですね。
あー、厩舎の先輩にタイキシャトルがおりますね。ラストランは当時12月に開催していたスプリンターズS、過去最高体重(春より20kg増)で臨んで脚が上がったところをマイネルラヴ、シーキングザパールに差されてしまいました。そこは真似しないようにお願いしたいところです。
ディープインパクト産駒初のスプリントG1制覇
デュランダルを彷彿させる追い込みだなと思いながら、サンデーサイレンス産駒のスプリンターズS勝ちをざっと確認、通算2勝でした。デュランダルの前にビリーヴがいましたね。ビリーヴの時は新潟での代替開催だったことも思い出しました。
グランアレグリアとフィエールマンが同時期に走っているのが象徴的というべきでしょうか、様々なタイプの産駒をだしていますよね。これは父サンデーサイレンスと似た傾向に見えます。スプリントG1のタイトルを増やして、またひとつ父の実績に近づいた形になりました。
ディープインパクト産駒、これで未勝利の芝G1は高松宮記念だけ。残された時間で達成成るでしょうか。
アウィルアウェイは持ち味そのままに3着
ゲートが遅く最後方から。鞍上の松山曰く「勝ち馬の後ろで運び」、大外から3着まで押し上げました。脚質的に直線で進路に恵まれないケースがままありましたので、今回は末脚が前回にできた格好。松山は高松宮記念以来の2度目の騎乗、しっかり力を引き出してくれました。
個人的にはいつ嵌るかと思っていましたが、G1の舞台で複勝圏まで来るとは。パークウインズ府中までガンバレ馬券を買いに行ってよかったです。
最後に
凱旋門賞の予想でわちゃわちゃとしていた分、投稿が日付を跨いでしまいました。
相当な不良馬場、ラブの回避、そしてエイダン・オブライエン勢の出走取消。スクラッチが多い分、予想を組み立てるのが難しいレースになりました。日曜朝の出走取消でテンションが下がってしまったのが正直なところでもあります。
レース回顧は別途投稿しようと思っていますが、今年は日本競馬にとっての凱旋門賞をうんぬんといった議論を脳内でグルグルしなくてよいのが気持ち的に楽ですね。どこかの投稿で書いた気がしていますが、個人的には2012年の凱旋門賞、オルフェーヴルが先頭に立った時点で「悲願」という呪縛からは解かれていますので。
まずは武豊ジャパンのチャレンジに敬意を表したいと思います。