more than a SCORE

1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

アールスターと長岡禎仁

自分は抑えでしか買えなかったのですが、アールスター、見事なイン突きで小倉記念を制しました。

なによりテン乗りで重賞初制覇した長岡禎仁。お見事でしたね。週が明けて、いくつか気になる記事がありましたのでそれと合わせて長岡の回顧をしようと思います。

1コーナーの入りに工夫

netkeibaのコラムでは、佐藤哲三が1コーナーまでの所作に注目していました。

news.netkeiba.com

有料記事なのですが、無料で読める箇所から少し抜粋を。

スタートを切ってから最初のコーナーに入るまでのところで、1度外を伺いながら、内ラチ沿いをちょっと空けながらコーナーに入って行くのがいい回り方だと僕は思っていて。

トロールビデオを見ると、スタートからほぼまっすぐ走って少し外に張ってから1コーナー手前でインに寄せています。このあと記事では外へのけん制になるという議論が続くのですが、記事を読んで映像を見直して、なるほど、と。事前によく準備してきたのでしょうね。

スタートからなんとなく内ラチまで寄せた場合、他馬にポジショニングを調整する余地を与えてしまい、1コーナーまでにひとつ後手に回っていたことも考えられます。然るべきけん制、テン乗りにやり切ったのはポジティブに捉える材料でしょう。

個人的には3、4コーナーの我慢がポイント

公式レースラップは以下の通り。

12.0-10.8-11.3-11.8-12.2-12.2-12.0-11.5-11.7-12.0

コーナーごとの通過順位に注目すると、掲示板に乗った5頭のうち、3着アウトライアーズ以外は2コーナーより3、4コーナーの通過順位が下がっています。

3コーナー過ぎでロードクエスト西村が早めに進出、1番人気のランブリングアレー武豊を捲る形をつくりました。やむを得ず武豊も呼応したのでしょう、これで先行勢はかなり苦しくなりました。この区間で我慢した人馬が着順を押し上げています。

アールスターの通過順位は6-6-7-9。3、4コーナーはペースアップへの判断だけでなく、逃げたミスディレクションがバテて下がってきており、それをパスする場面でもありました。慌てていませんでしたね。ここの落ち着いた判断が素晴らしいなと。勝負に逸るより、冷静に展開を見極められていたように見えています。

フェブラリーSケイティブレイブを思い出したんですよね。こちらもペースに対してしっかりカウンターできるポジションがとれていたなと。こういう判断はセンスと呼んでもよいように思います。正直これまであまり注目していなかった分、新鮮に受け止めている部分が大きいかもしれませんが。今後の騎乗ぶりへの見方はグッと変わりそうですね。

調教でチャンスをつかむ

平松さんの記事では気難しい面に対して、調教でじっくり取り組んだことが書かれています。

news.yahoo.co.jp

2019年10月に2勝クラスを突破してから、クラスの壁にぶつかっているように見える戦歴ですが、今年にはいって長岡が調教から離れたようで、こちらも成績に直結しているように見えますね。

杉山師は調教の様子をみて、手の内にいれていることをアドバンテージと捉えて騎乗依頼を決めたとのこと。ケガが重なってチャンスを逃す時期が続いたようですが、自らの行動でチャンスを掴むことになりました。

そうそう、デビュー時の所属は小島厩舎だったんですね。アウトライアーズ、ロードクエストは小島厩舎。記事にある「お?! 重賞に乗せてもらえているんだ。良かったじゃないか……」というニュアンスから、師弟がほどよい距離感にあることを推察しています。ひとに恵まれるのも大事ですね。

コディーノのエピソードを援用

2020年6月号の『優駿』では過去のダービージョッキーへのインタビューを再掲していまして、たまたま先日読み直すタイミングがありました。

キズナのダービー直後のインタビュー、武豊が語っていたのはコディーノの乗り替わりについて。横山からC・ウイリアムズへの乗り替わりを知った時「感じていた脅威がすっと引いていった」ように感じたそうです。ウイリアムズの実力が云々ではなく、鞍下をよく知った横山だったからこそ脅威だった、という言葉が続いていました。

レースでの騎乗は初めてでしたが、癖をよく知っているという意味では今回、長岡に同じ種類のアドバンテージがあったものと理解できます。

ただ、あくまでジョッキーとしての技術、経験からくる引き出しの多さがあってこその脅威ではあるでしょう。長岡のキャリアからすれば、これからどれくらい経験を増やすことができるか。トータルの騎乗数からギャップがありますものね。

限られたチャンスを生かしての重賞制覇。これからに期待したいと思っています。