先週賑やかになっていた話題をきっかけに。
ことの発端は生産者の怒りのツイートだったようです。どうやら解説の有り様が怠慢に映ったようですね。その是非を検証するのはどなたかにお任せするとして、これをきっかけにパドック解説について建設的な言葉を見つけましたので、少し取り上げてみたいと思います。
パドックでの指摘に必要な配慮
古谷さんは自身の体験を紹介。欠点にあたると考えられる点もファンのために指摘する、その伝え方についてどう試行錯誤することになったのかがよくわかる投稿です。
象徴的と思われる表現、少しだけ抜粋しますね。
実力がはっきりしていると思っても、それは主観であり、本当に自分が思っていることが正解かはわからない。だから、どの馬にも勝つチャンスがあるという視点でメンバーは見るべき。そして、すべての馬に◎を打つと思って、各馬の可能性を見出し、良い所を見つける努力はすべきだと思う
パドック解説への期待値を整えるというアイデア
一方、研究ニュースの小林さんは、パドック評価のコンセンサスを作る必要があるのでは、という指摘。
パドック評価のコンセンサスを作る必要があるのではないか。
— 小林 (Kobayashi) (@knews_kobayashi) 2020年6月12日
つまり馬体、体調が良い馬を推奨するのか。それとも見た目を踏まえた上で馬券に絡みそうな馬を推奨するのか。
前者なら見た目だけで挙げればいい。ただし、推奨馬の成績は度外視。
後者なら展開や成績、印など加味しないと判断できない。
「馬体、体調が良い馬を推奨するのか」。それとも、「見た目を踏まえた上で馬券に絡みそうな馬を推奨するのか」。古くて新しい議論と感じます。自分がファンを開始した当初からあまり論点が変わっていない印象ですね。あいまいにしたまま、今に至っているということだと理解しています。
ある意味、どちらもニーズがあり、どちらもそのニーズに応えている側面があるのでしょう。観ている側も一様ではないですから、これをテレビ(専門チャンネルや地上波)、ラジオを越えて整えることの難しさは容易に想像がつきます。でも、解説に期待することと提供される情報にギャップがあれば、視聴者はかなり苦痛な時間を過ごすことになりますよね。
私見として、パドック解説のベースラインがあってほしい
個人的には、パドック解説で基本的に触れるポイントが共通化できないかと思い至っています。以下、提案になりますね。
- まず目につくこと
- 骨格、筋肉、テンションなど
- それが今日のレースで強みなのか弱みなのか
- 縦の比較
- 前走、それ以前と比べる
土日の地上波はこれだけで時間いっぱいになりそうですね。時間が許すようなら、戦歴などの情報を組み合わせて評価したり、矯正馬具やエクイロックスの影響に触れるのも全然アリでしょう。
解説に唯一の型を設けるのはさすがに不器用ですし、最低限押さえるポイント、ベースラインを決めて話してもらうなら安定した期待値でもって観やすくなるのでは、と思っています。
また、ベースラインを整えると解説者の個性も際立つように思います。解説者間の横の比較もしやすくなりますし、解説者の努力もより観る側に伝わりやすくなるのではないかと。
細江さんの解説の巧拙
少し脱線しますが。着目しているポイントが自分がピンときていることに近い印象がありまして、最近では一番参考にしています。
フジの中継で1頭挙げた馬がこちらの思惑と一致すると、何やら答え合わせができたような気になっていますしね。エプソムカップのソーグリッタリングは激しく同意でした。
…おそらくですが、「ハリ感」という表現は美容関連の用語を転用でしょう。美肌感を醸し出してますね。それも上手く嵌っている印象です。
一方で、強調したい場面でワントーン上げて話し続けてしまうことと、言葉数が多いこと、あたりがちょっともったいないかな、端的に聞き取りにくくなっていますので。また、評価に迷いながら話している場面はなぜ迷っているかが伝わりにくい層もありそうだなと。…でもこれはこのまま受け止めてもらう方がいいかもしれませんね。
最後に
元ジョッキーや元調教師の方の解説は、経験込みの主観にいろいろな要素が綯い交ぜになりますので(かつあまり雄弁でない表現になる傾向)、なんといいますか、こういうものだ、という根拠の伝わりにくいトーンになりがちな印象があります。
活躍の場としては程よいのでしょうが、この起用パターンがパドック解説のアップデートを阻む要因とも感じます。キャリアがある分、周囲はレビューしにくいでしょうしね。
野球解説に似た感覚を覚えるんですよね。関係者がどんな常識、セオリーを認識しているのかを知ることはできるのですが、観る側が話者の先入観にお付き合いしなければならない場面は、こちらの気持ちが少し引く瞬間でもあるでしょう。
視聴者のリテラシーが一様に揃うことはないわけで、それがパドック解説の精度向上を難しくする要因でもありそうです。多様な解説を期待しつつ、少しずつでも創意工夫のあとが見えると有難いなと思っているところです。