アロゲート、7歳で亡くなってしまいました。
JRA-VAN ver.Worldに記事が上がっていました。首を痛めたことで種付けを中断、4日間の闘病の末回復の見込みなく安楽死の判断となったようです。
繋養先のジュドモントファームでも死亡公表の記事がアップされており、もう少し詳細な経緯を読むことができます。Racing Postの記事もこちらを元にしたものと思われます。
種牡馬にとっての首
種馬が首を痛めて、という話は昨年日本のファンが経験していますね。ディープインパクトも首を痛めて残念な結果となりました。もちろんこの符合だけで因果関係を認めることはできませんし、外野からは邪推するばかりになります。実際、上記の記事でも死因を特定しきれていないことが書かれていますし。
ただ、体重の20%ともいわれる重さをもつ部位で、種付けの際には牝馬の首を噛んでバランスを取ることもありますから、負荷がかかりやすい状況があるのかもしれません。個別のケースとして捉えるべきなのか、ある種の傾向が認められるのか、このあたりも取材や研究結果をベースにした記事を目にできたらと思っています。
トラヴァーズSが衝撃的
おそらくアロゲートの名前が大々的に報じられたのはこのレースでしょう。自分もここで初めて認識しました。それまでは連勝中の馬がいるよ、程度の報道だったのでは。
プリークネスS勝ちのエグザジャレイター、ベルモントS勝ちのクリエイター(JBBAが輸入しましたね)、そしてケンタッキーダービー3着のガンランナー。2016年のアメリカ3冠の強豪が顔を合わせた「真夏のダービー」を13馬身ぶっちぎってしまいましたからね。
JRA-VAN ver.Worldにアロゲートのページがあります。そのトラヴァーズSからブリーダーズカップクラシック、ペガサスワールドカップ、そしてドバイワールドカップ、圧巻だったこの4戦がすべて映像を見ることができます。カリフォルニアクロームを飲み込んだブリーダーズカップクラシックは象徴的なチャンピオン交代の瞬間でしたね。
トラヴァーズS3着のガンランナーは、翌2017年にブリーダーズカップクラシックでアロゲートを返り討ちにし、年度代表馬に選出されます。明けて2018年のペガサスワールドカップも勝利するわけですが、「いや、あの全盛期のアロゲートには敵わなかったよな」という感想がどうしても浮かんでしまいます。いや、ガンランナーも強いわけなのですが。2017年のデルマーは前の止まらないスピード馬場だった、という指摘だとかなりアロゲート擁護になりますでしょうか。
ストライドの大きさと心肺機能
走りの特徴はやっぱりあの大きなストライドと無尽蔵な心肺機能と思います。以前のツイートですが、ボブ・バファート師のコメントを取り上げておりますのでこちらで。
ボブ・バファートによると、アロゲートのストライド以上に長い一完歩は見たことがないそうです。アメリカンフェイローの時のコメントは、「地上で彼のような動きをする馬を見たことがない」だったので、2頭連続して彼にとっては「見たことがない」シリーズということですね。 https://t.co/ltmi5SEwyp
— mitsuoki (@mitsuoki) 2017年3月20日
スタミナについては以前の自分の記事で取り上げた、スポーツ報知のインタビューからの引用を。こちらもボブ・バファート師のコメントです。
『米国のダート競馬で一番必要なのはスピードです。スタミナも必要ですけど、長い距離のスタミナと違うスタミナです。スタートからゴールまで持続できるスタミナが必要。調教でトレーニングすることが必要だと思います』
個人的に連想するのはキタサンブラックのトレーニング、どちらも抜けた心肺機能をもういち段階引き上げる効果があったのかなと。トレーニングの詳細はそれこそ「秘伝のたれ」でしょうからなかなか報道ベースにはでてこないかもしれないですね。
異国のスターホース憧れ
自分の競馬ファン歴が始まってしまった当時はシガーが活躍中でした。新設されるドバイワールドカップ(1997年が第1回)に参戦するかで議論が起こっていたのが懐かしいですね。いまでいうとマキシマムセキュリティが参戦した今年のサウジカップが近い存在でしょうか。
シガーの連勝はまた違う意味でワクワクしていました。特に海外の映像がほぼ得られない時代ですから、競馬番組で一瞬取り上げられてはおおおおとテンションを上げていたことを思い出します。たぶん、いまのように情報インフラは整備されても、そうした異国の実力馬にワクワクするマインドはあまり変わらないのでしょうね。自分にとってアロゲートはそうした1頭でした。
先ほどジュドモントファームのページを除いて記事を確認したわけですが、繋養種牡馬の一覧にまだアロゲートが。ページ取り下げていなかったんですね。いずれ見られなくなるであろうページですのでスナップショットを残すつもりで。
最後に
プレザントリーパーフェクトの訃報も立て続けに聞こえてきています。競馬ファンを続けるほど、視野を広げるほどに訃報に驚く機会もまた増えていきます。いちファンとしては事実の受け止めと気持ちの表明くらいしかできることはないわけですが、人間より寿命が短いことが奏功しているのだな、と思うことにしています。
それにしても早いですよね。7歳というとエルコンドルパサーと同じ。こう捉えると残された産駒が少ないこともイメージが容易になります。ワクワクさせてくれる産駒の登場を期待しています。