more than a SCORE

1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

第15回 ヴィクトリアマイル

アーモンドアイ、素晴らしいパフォーマンスを見せてくれました。ありがとうございました。

ゴールを迎えた直後に感謝の気持ちが沸きあがるレースというのも珍しいですね。フジの中継でヒロシさんが話していた通り、ありがとうございましたというひと言にいろいろ集約されていると感じています。

感染予防、収入減、緊急事態宣言、無観客競馬と、観戦する側もさまざまに制約や不安の多い環境下ですし、一方のアーモンドアイ自身も香港遠征断念、有馬記念惨敗、現地到着後のドバイミーティング中止など、立て直しの一戦という位置づけでした。1.4倍という単勝オッズ以上に、不安点を挙げて本命を別にする予想が比較的多かったという印象があります。…全部、杞憂におわりましたね。

サウンドキアラの外に誘導してからの圧倒的な加速とフォーム。堪能させていただきました。

公式レースラップ

12.0-10.9-11.3-11.4-11.1-11.2-11.1-11.6

ペースの比較に、トロワゼトワルの京成杯オータムハンデを載せてみます。

12.3-10.6-10.4-10.9-11.2-11.4-11.5-12.0

トロワゼトワルの逃げは整然かつ決然と

上記の通り、京成杯の方が前傾も前傾、相当突っ込んだラップになっています。今回はコントラチェック武豊が早々に2番手と判断をしたことで、厳しすぎないペース配分ができたと見ています。三浦皇成からすれば想定内だったでしょうね。

前後半がイーブンだから平均ペース、という論調も目にしましたが、いえいえ。4コーナーで11.1と加速ラップを計時しているあたり、前残りするために早め早めにアクセルを踏んでいったことが確認できます。アーモンドアイの加速を待たずにリードを取る、勝利の可能性を手繰る戦略であったことでしょう。その結果4着に粘り込んでいますから、なかなかに攻撃的な騎乗が奏功したと見て取っています。

前々に付けないと、というバイアスはコーナー通過順に表れている

2頭取り消して、16頭立てとなったレース。ちょうど半分の8着までと9着以下に分けてコーナーの通過順を見ると、4コーナーで9番手以下から8着以内に差し込んできたのはプリモシーンだけ。

8番手通過が3頭いますので厳密ではないですが、シゲルピンクダイヤ6着、ラヴズオンリーユー7着、スカーレットカラーは着順を下げてしまい15着。少なくとも2桁の番手から上位争いに加われた馬は皆無でした。インが伸びるというより、インもアウトもコンディションがよいので前で運んだ馬は必然的にインを通り、そのまま上位入線するというバイアスだったのでしょう。

きっと上位人気馬のジョッキーはみんな分かって臨んでいたでしょうね。

ルメールは低調ゆえのセーフドライビングに見えました

前がとまらない馬場バイアスですから、スタートを決めたことは大きかったですね。8枠のコントラチェックとサウンドキアラが寄せてくるでしょうから、それを前方に捉えるポジショニングがもっとも望ましい展開とイメージしていました。サウンドキアラは容易にバテないでしょうからね、前に置くには安心であったでしょう。

当日、ルメールは不調に見えました。単に0勝だったという事実だけではなく、午後の芝条件戦2つとも、後手を踏んで4コーナー外を回しゴールまで追い込み切れずという負け方。らしくない運び方であったと思います。

12番枠から全く無理のないコース取り。変にインに切れ込まず、変に外々を回されない、実にセーフティなポジショニングに徹していました。不調なりにこれができるのがリーディング、と持ち上げておきましょうか。ひょっとしたらアーモンドアイに助けられたと感じているかもしれません。抜け出した後に外を振り返っているのは、そうした流れの悪さを自覚していたが故、念のためという心理が働いたとも邪推も成り立つように思っています。

直線の手前替えの理由について、妄想に近い邪推

さらなる邪推ですが、トロワゼトワルを交わして先頭に立つあたりの数完歩、左手前を変えていますよね。ルメールの右の肩ムチに呼応したものと見て取れますが、個人的には肩ムチの理解が人馬でずれたのかな、と思っています。

手前替えの理由について、馬に余裕があったなど、いろいろな解説を目にしました。確かにウィークポイントを作らないルメールのドライビングが生んだ余力、余裕がなせる技であったとも思えます。

でも「そっちの手前じゃない」「え?」みたいなちょっとすっとぼけたやり取りのようにも見えていまして。そう思ってリプレイを観るとなかなか微笑ましい間にみえてくるんですよね。いずれ鞍上からコメントがでるかもしれませんし、いまいまは個人的な邪推に留めて楽しんでおこうと思います。

アーモンドアイの仕上がりに懸念なし

素人にもわかりやすいくらい、パドックのOFFと返し馬のONがはっきりしていました。馬体の仕上がりは上々。パドック映像で本命視を覆す理由はなくなったと感じていました。

1週前追い切りの唸る脚色と、一方の最終追い切りは少しストライドを詰めて、ギアを一つ下げて直線を我慢する調整重視の内容。目的の異なるトレーニングにしっかり対応できていましたから、ルメールよろしく心身ともに充実していますよねw

ドバイミーティング後は、調整の難しさに泣くパターンが多いわけですが、4/30には天栄から美浦に帰厩。その直前4/25にはヴィクトリアマイル参戦を発表していましたので、至極順調に調整ができていたことが窺えます。

少し前の投稿で、オーナーシップなり鞍上ルメールなり調整があったのではと邪推満載の記事を書きましたが、ヴィクトリアマイル参戦の一番の理由は、アーモンドアイが順調だったことにありそうですね。周辺事案のマネジメントも大事ですが、馬のコンディションありきなら納得するところです。

ウオッカヴィクトリアマイルとの相似形

2009年に7馬身差をつけた先輩がいましたね。巻き返しという文脈は若干似ているように感じます。ウオッカ。ドバイでの惨敗を巻き返すという位置づけで臨んだ一戦でした。

手元に書籍がないので記憶を手繰りますが、ウオッカの書籍でこのヴィクトリアマイルで結果が出なければ、繁殖入りを考えていたという記述があったはずです。それだけドバイの敗戦は陣営を悩ませていたようです。それがあの歴史的着差ですからね。

問われた質は異なっていても、どちらも圧倒的なフィジカルと美しいフォームを堪能できます。今回の4馬身と7馬身、着差の数字の差は問題になりませんよね。ちょうど映像を並べたツイートがまわってきましたので、紹介させていただきます。

 

G1・7勝は最多タイ

シンボリルドルフテイエムオペラオーディープインパクトウオッカジェンティルドンナキタサンブラック。ここにアーモンドアイが肩を並べました。昨年とっくに並べていたはず、という感覚がありますので、やはり7勝まで積み上げるのは難儀するなと。

府中のG1勝ちが多い点はウオッカ、トリプルティアラはもちろんジェンティルドンナ、2頭を混ぜ合わせたような戦歴ともいえますね。

ジェンティルドンナキタサンブラックは7勝目が引退レースでしたから、8勝目にチャレンジするのはウオッカ以来。今年いっぱい現役でいるなら8勝目、できそうですね。次走は未確定ながら安田記念に向かって調整している様子。昨年のリベンジでもありますし、楽しみですね。

サウンドキアラは上手い立ち回りで2着

実質1着、ですね。松山、よく外枠からあのポジションを取りました。鞍下の特徴と馬場バイアスを踏まえてあの戦略に至ったのでしょう。

個人的にはアーモンドアイに目標になってしまう可能性を考慮して、その分着順を下げるのではと予想していました。案の定思いっきり真後ろにつけられてしまいましたが、最後まで粘っての2着。立派でした。

ノームコアはスタート決まらず

もう少し前で立ち回っているイメージでしたが、鞍上もコメントしていた通りスタートも二の脚も十分ではなく。アーモンドアイより前で立ち回っていたら、もうひとつ着順が上がっていたように思っています。

前走高松宮記念は、やはり馬場も距離も合わなかったのでしょうね。前年覇者の走りは見せてくれたように思います。もうひとつ締まった馬体だったら、という気もしていますね。

セラピアが走っていたら

当日に出走取消。もったいなかったですねー。前走難波Sはスローからのギアチェンジで勝利。前目につけてからの切れ味発揮ですから、このヴィクトリアマイルとは比較的親和性のあるラップ構成でした。前走の経験をそのままスライドしやすいわけですので、あとは久々の関東圏輸送とG1のメンバーでどこまでやれるか。個人的には馬券圏内はあり得ると見立てていました。

坂路の追い切り映像。僚馬の真後ろにつけていましたが、唸る勢いで一気に交わしていきました。どおぉりゃあああーというテンションがよく伝わる映像です。あの勢いで府中の直線が粘れたのではないかなと。こちらはこの見立てを忘れずに、まずは戦列への無事の復帰を待ちたいと思います。

ダノンファンタジーは展開と馬場不向きで5着

-20kgの馬体はしっかり仕上げてきた結果。パドック映像では十分な仕上がりと見えていました。

川田はちゃんと先行策を取るものと思っていました。予想の段階では馬券圏内の可能性を重く捉えたのですが、上がり33.5でも前を交わしに行けるチャンスはほぼありませんでしたね。スローのローズS、接戦でしたがあれくらいスローのほうがこの馬の特性は活きるのかもしれません。

何と言いますか、いわゆる府中の高速馬場で、ストライドが大きいあるいはパワーで加速するタイプは、後方に控えても大きなアドバンテージが得られにくいように見えています。トランポリン馬場という表現も耳にしましたが、馬場がグリップしやすくスピードを殺さない分、パワーで加速するより回転数の速い、軽快なフォームの方が上手くスピードを維持できるという見立てです。

ダノンファンタジーに限らず、シャドウディーヴァ、コントラチェック、スカーレットカラーあたりはパワー寄りという認識。それはそれで活かせる場面はあると思いますが、この府中では持ち味がスポイルされてしまったという認識です。

最後に

あっという間に1週間が過ぎてしまいました。ゴール直後の高揚感がまぁまぁ落ち着いた状況で言葉をまとめているところですが、これがいいのかどうか。ああいったレースは高揚感そのままに書いてしまいたくて。平日はなかなか。

ステルヴィオ安田記念回避の報。レースの反動がでたようで、徐々に動きが硬くなってしまったとのことです。

1年前のNumberの記事、天栄を取り上げた際に大竹師のコメントが載っているのですが、その言葉と符合するなと思い至りました。曰く、

「今の競馬は、一走の負担度が、昔より断然高くなっています。だから、レース後は時間をかけて疲れを取り除いてから、次のレースに向けた負荷をかけなければならない。疲れを取る期間と、負荷をかける期間とが重なってしまうと、GIの舞台では厳しくなるという印象があります」

number.bunshun.jp

決してステルヴィオが不十分な状態で出走したわけではないでしょう。ただ、いまの府中の芝馬場はトップスピードが速い分だけ、1走あたりの疲労度も相当に大きくなるようですね。

天栄はいち早くそれをキャッチし、G1で最大限パフォーマンスが出せるよう、間隔を大きく空けたローテーションを取るようになったのかもしれません。その結実がアーモンドアイでありフィエールマンであるとすれば合点がいきます。

図らずも自分が立てた仮説が着々と証明されているようで、何とも言えない気持ちになります。トップホースの走る姿はたくさんレースで観たいですからね。以下、当時の投稿です。

keibascore.hatenablog.com

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