more than a SCORE

1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

第161回 天皇賞(春)

フィエールマン、史上5頭目の連覇成りました。

3コーナーでも4コーナーでも、ルメールは動きませんでした。ここが最大の勝因でもあり、おそらく結果オーライだった面であるとも思っています。もちろんある程度の読みがあったうえでの戦略および賭けだったのでしょうけどね。

昨年は1周目のスタンド前でグローリーヴェイズをパスし、コーナーごとに通過順を上げて、最終コーナーでは先頭でした。長距離は騎手で買え、と言われるのは、こうしたジョッキーの判断の余地が大きいことにあるのでしょう。

パドックでの仕上がりもよかったですものね。ひょっとしたら示したパフォーマンスは昨年より上かもしれません。メジロマックイーンテイエムオペラオーフェノーメノキタサンブラックのいずれとも異なる連覇と映ります。強かったですね。

公式レースラップ

13.2-12.4-12.4-12.5-12.5-12.0-11.6-12.5-12.1-12.2-12.7-12.5-11.9-11.9-11.9-12.2

昨年のレースラップ、参考までに。
12.9-11.5-11.6-11.6-12.2-12.2-12.5-13.8-13.3-12.4-12.5-12.3-11.7-11.6-11.0-11.9

キセキの逃げはでき得る限りでの次善策

スタート、でましたね。これだけでも乗り替わりの意義は大きかったと思います。出遅れについてはお父さんにもだいぶお世話になりましたからね。いい思い出ですけどね。

3番手キープで1周目のスタンド前まで進めることができましたが、前に壁が作れない隊列、直線に向いて自分のストライドで走ってしまいました。12.0-11.6がおおよそ1周目のスタンド前、12.5が1コーナーですから、コーナーでの減速とダンビュライトをパスして先頭に立つことを両立させたのは、武豊のせめてものファインプレーというべきでしょう。

mahmoudさんのツイートでは、キセキが気分よく走れるラップが11.6くらいとのこと。世界レコードの2着だった一昨年のジャパンカップ、向こう正面が11.7ないし11.8ですから、概ねあの走りと合致するものとイメージがつながっています。

毎日王冠天皇賞秋、そしてジャパンカップと、川田が強気な逃げの手でハイラップを続ける戦略を取りました。毎度逃げ馬不在で押し出されていた認識ですけどね。この短期間で取り続けた戦略がキセキに「こういうものだ」というパターン認識をさせたかもしれません。道中は自分のストライドでスピードに乗って走る、という。レースに嫌気がさしているのかもしれませんが、個人的には馬の学習と気性のマッチがここ2戦はマイナスに働いている、という理解で腑に落ちているところです。

最後の直線、武豊が内ラチから離したコース取りにしているのは、インの馬場コンディションへの配慮が大きいように理解していますが、できるだけストライドロスを減らすコーナリングとを両立させた戦略でもあったかと。ここまで配慮してもラストは失速ですから、キセキ自身のスピード感覚で3200mを走り切るのは現状難しかったと結論付けるしかないのでしょう。

…当日の夜、「麒麟がくる」を観ていまして、斎藤道三が自身の死も覚悟して負け戦に臨む姿が描かれていたのですが、この「これまでを貫いてしまう」引けない佇まいが、自身のストライドで走り切ろうとするキセキに少し重なってしまいまして。。。もちろん動機は全然異なりますけどね。

ステイヤーの資質に関して

望田潤さんのレース回顧です。血統の話に並行してステイヤーについて触れていまして、そこが興味深かったですね。以下、リンクと引用です。

blog.goo.ne.jp

13秒台でいかに疲れず燃費よく走れるかというのもステイヤーの必須条件で、それは得てしてスロー専というべき成績として反映されがちで、キセキなんか12.0で走っても13.0で走っても同じぐらい疲れる気がするんですよね(^ ^;)

切れを兼備するかは別として、この「燃費よく」追走する力がステイヤーの資質という指摘には賛同するところです。それでいうとフィエールマンも決して3000超に自身の適性があるわけではないのでしょう、多少折り合いに苦心していますからね。

フィエールマンは動かないという勝負に徹する

勝ち馬の話をしましょうか。冒頭で書いた通り、ルメールは最終コーナーまで動きませんでした。外枠と折り合いが懸念されていたのはその通りで、最初のコーナーでシルヴァンシャーの後ろにいったん下げたのはそのための対策と理解しています。

厳密にいうと2周目の向こう正面で、前に置く相手を変えていますね。外からのミッキースワローの進出を見て、シルヴァンシャーの後ろを捨てて1頭分外へ。結果的にミッキーに合わせて上がっていったメイショウテンゲンの後ろになりましたが、横山が容易にバテないことに期待しての判断だったと推察されます。

ひょっとしたらメイショウテンゲンがバテていくまでの数秒間、ここは待ちたくなかった間だったかもしれませんね。

日曜になってから(と思っていますが)外差しバイアスが強くなった馬場コンディション、キセキが引っ張った際の勝負どころのラップ推移、鞍下のコンディションやパワーアップ、これらを全部ブレンドしての待機策と受け取っています。さらにレース中に微調整しながら勝負のタイミングを狙っているように見えることが素晴らしく。

末脚の長さ、競っての強さはすでに証明済み。とはいえ、差し切れる確証はなかったでしょう。前との差を何とかしてしまったのはフィエールマンの力と思っています。G1・3勝目は伊達ではないですね。

次走は宝塚記念

早々に発表がありました。凱旋門賞から有馬記念もなかなか厳しかったでしょうが、今回はこれまででもっとも間隔を詰めたローテーションになります。昨年気が付いて指摘していたのですが、凱旋門賞へ遠征するまで、レース間隔は3カ月をキープし続けていまして。

keibascore.hatenablog.com

使って、休めて、仕上げて、使う。このリズムが一定に保たれていることが窺えるローテーション。これを崩して臨む判断が早々に出てきたということは、だいぶカラダができてきたというメッセージでもあるのでしょうね。2歳の番組の充実、早期の使い出しはあくまで人間側の事情、トップホースの完成までにはこのくらいかかるものなのかもしれませんね。

前回アーモンドアイの鞍上バッティングについてお目を汚しましたが、ルメールのバッティングはここでも。サートゥルナーリアとフィエールマン、贅沢で悩ましい選択になります。ファンからすれば残酷ながらも楽しみな判断、ワクワクして結果を待ちたいと思います。

スティッフェリオは無欲の2着

先行策、ダンビュライトの近くでマイペースで。これ以上の戦略はあまり感じられない運び方でした。わるい意味ではなく、北村友一はシンプルに捉えて乗っていたのでしょう。ラスト5完歩で止まってしまったとのコメントを見つけましたが、13秒台のないラップ構成、パワーの要るコンディションからすると大善戦だったと思います。能動的にラップメイクしないことが奏功した、という言い方でもよさそうですね。

パドックでの出来をみて、ステイゴールドであることを思い出して相手に加えました。昨年のオールカマーでやられてしまっていましたので、しっかりピックアップできてよかったです。

ユーキャンスマイルはインへ、トーセンカンビーナはアウトへ

勝負どころで対照的な進路選択となった2頭。阪神大賞典の1、2着はどちらも勝敗に関わるには至りませんでした。

浜中への乗り替わりはあまり大きく影響しなかったものと見えています。ただし4コーナーでのイン選択は望んでいない、やむを得ない判断であったかなと。

3コーナー過ぎまでハッピーグリンが外で張っていたこと、ハッピーグリンをパスした後ほしいポジションはおそらくモズベッロがいたこと、その外へ回すとミッキースワローの後ろかつフィエールマンに外から蓋をされる可能性、これらのシチュエーションが4コーナーまでに次々とやってきていました。浜中がどれだけ瞬時に判断していたかわかりませんが、インへの判断はスポイル回避の意味で妥当だったと思っています。ただ、インのコンディションでは伸び切れませんでしたね。

一方のトーセンカンビーナは3コーナー過ぎからせわしない仕掛けになってしまいました。馬群のペースアップについていくのに難儀する形。阪神大賞典上がり3ハロンが失速ラップになっているところを後方待機から差し込んでいまして、今回求められた差し脚とはかなり質が異なっていたようです。予想の段階でここに注目していたので今回は重視しませんでした。阪神大賞典本命だったので、まぁまぁピントのあった見立てができていたものと思っています。

最後に

5/4月曜、緊急事態宣言が約1カ月延長になることが発表されました。すでに5月末のダービーまでは無観客競馬の延長が決まっていますので、中央競馬の開催日程に大幅な影響はなさそうです。ウイルスそのものよりも、経済活動への打撃やステイホームが続くことで心身の健康への懸念など、副次的な影響についてもだいぶ自覚的に語らなくてはいけない世界になってまいりました。

感染症の歴史に関する文庫本などを読み始めていますが、ウイルスとの「共存」は文明化にともなって生じるある種必然の問題ということも理解し始めています。

変化をほしがる経済人はニューノーマルという表現に商機を託しているようにも見えます。わるいことではないですが、まずは日々の安定のために、実効性のある対策をなじませた生活様式をつくっていくことが一個人として肝要かなと思っているところです。はい、真面目ですね。外膜(エンベロープ)を壊してウイルスを不活化するから手洗いが大事、といった科学的な理解を前提にすることも大事になるでしょう。

…ここのところ「最後に」の話題がコロナウイルスばかりになっている気がしていますね。なんといいますか、怖れて動きを止めてしまうではなく、対策でリスクを低減して楽しむ時間や方法を増やしたいと思っていまして。巣ごもりしている間中、気持ちまで塞ぎ込む必要はないわけですから。

平日の業務は変わらず続けられそうですし、それらに感謝しつつ、まずはGWの残り時間を満喫したいと思っています。