more than a SCORE

1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

『平成競走馬進化論』と『優駿』の鼎談から

立て続けにチェックしたのでまとめて。

『平成競走馬進化論』は良質な企画

こちらはグリーンチャンネルの番組名。いい企画ですねー。コジトモさんが研究員となって、平成の間に「日本の競走馬が進化したのか」or「ホースマンの技術が進化したのか」を検証する内容です。

個人的には2択で問いかける意味は薄いかなーと思いつつ、不特定多数にむけたTV番組の切り口ですから、キャッチさも大事ですし視聴者との認識合わせに時間を要するのは妥当だなとも思うに至りまして、じわじわと勝手に納得しているところでございます。

惜しむらくは、グリーンチャンネルのHPから番組に関するページが削除されていること。アーカイブ的に残した方がよいと思うのですけどね。何とも、もったいない。

https://www.gch.jrao.ne.jp/program/heiseikyousouba.html

いちおうWikipediaでは各回のテーマは確認できますね。さすが。

ja.wikipedia.org

なお、視聴にあたって。実家でBSアンテナを立てていまして、全7回の録画をお願いし、Blue-Rayに全話焼いて自宅でまとめて観るという手数を踏んでおります。…いや、自宅でグリーンチャンネル視聴できるとなると、おそらく社会生活がままならなくなるはずでして…。ずっと観ちゃいますからね、何とか少しのハードルを自らに課している状況です。危ない危ない。

人も馬もレベルアップした、でよいようです

7回分観た感想。ひと言で表現するとこれに尽きるかな、と。身も蓋もない表現かもしれませんが、この結論に視聴者が辿り着くまでの運び方が秀逸。

馬(血統、体質)も扱う人の技術(土壌、飼料、ブレーキングやトレーニングのメソッド、馬への接し方)も平成の30年間でレベルアップしたんだなーという感想をもちやすい番組構成であった印象です。

下河辺牧場の下河辺行雄さんの選んだ言葉、「相乗効果」という表現が最も的を射ていると思いました。

下河辺牧場の下河辺行雄さんの3区分は興味深い

平成の競走馬の動静について、ざっくり10年ごとに3区分されていました。「混乱・投資」「成長・変革」「発展・成熟」の3つ。この妥当性は自分にはなかなか判断できないのですが、ひとつの見解として興味深く受け止めております。

大きな変化として指摘されていたのは、昼夜放牧の導入、飼料コンサルタントを入れての単味飼料から総合飼料への切り替え、コンサイナーの普及、あたりでしょうか。

平成のG1馬の調教映像がズラリ

これはヤバかったですねー。5、6回はモーションというテーマ設定で平成のG1馬の追い切り映像を次々流すという企画。すごいです、ええ、すごいです。

特に鈴木由希子さんの解説が刺さっております。オグリキャップを「換気能力が高い」と評価するのは初めて聞きました。辻三蔵さんとのダブル解説でしたが、こちらはナリタブライアンのスピードを感じさせないダイナミックなフォームはキタサンブラックに似ていると指摘。お二人そろって、グラスワンダーエルコンドルパサーの際立った特徴についての感想戦も面白かったですね。

わざわざ煽るように例示したつもりですので、ぜひ映像で。

番組としての結論は特番に持ち越し

7回で終わらなかったのは個人的には朗報。7/17の特番が楽しみです。個人的には、ノーザンファーム天栄の木實谷さんと総研の高橋敏之さんのマッチアップが超アガるところですね。高橋さんはディープインパクトのフォーム解析で知られている方です、はい。

www.gch.jrao.ne.jp

優駿』の鼎談は重厚感たっぷり

一方で7月号の優駿。「[ビッグスリー スペシャル鼎談]吉田照哉藤沢和雄武豊」という字面はなかなか強烈でした。発売からほぼ1週間遅れで購入。楽しみにしていた甲斐がありましたねー。

意外とお互いが話してきていない

多分に編集されているとはいえ、それぞれから挙がった話題は、そこそこ書籍や雑誌記事に触れているファンであれば既出なエピソードばかりなんですよね。サンデーサイレンス導入の経緯や、シンボリクリスエス青葉賞後の会話、などなど。

そりゃあ、それぞれのフィールドでのトッププレイヤーですから、顔を合わせた際にはもっと現在進行形のビジネスライクな話題が中心になることでしょう。「そうだったの?」と認識を新たにするやりとりは、かえってリアルでとても面白く読み進められました。

競走馬進化論と重なるコメントも

気になった内容を抜粋しようと思います。上記の進化論と関連していると感じた部分が中心ですね。あ、いちおう、正しい見解としてではなくトッププレイヤーの体感から来るいち見解として受け取っています。貴重であることは疑いようがないですね。敬称略で。

  • サンデーサイレンスがはいってから日本の競馬が大きく変わった(藤沢)
    • スピードが違う、軽めの稽古で走る
  • 乗り方も変わった、「溜める」ことが大事になった(武)
    • 馬場の管理技術が高くなって追い込みが効きやすくなった
  • (サンデーの仔は)馬場やレースの質の違いも乗り越える(藤沢)
  • ダートで見てみたかったサンデー産駒はたくさんいる(吉田)
  • 日本のダートは全体的にまだアメリカと比べて異質(武)
    • もう少し時計が速くなってもいいのかなと思う
  • アメリカはもともとスピード指向、ヨーロッパでもスピード化は進んでいる(藤沢)
  • 日本の芝が高速馬場といわれているが、馬の進化からみれば速くなって当然(吉田)
    • ダートももっと速くていい
  • レースがスピード化されていく分、調教でより馬を大切に扱うことが大事になる(藤沢)

…ボリューム満点ですね。

個人的にはエクイターフ導入後はより前目のポジションで溜めないと勝ち切れないように感じていますが、それも血統の更新、馬体の強さ、トレーニング技術などのレベルアップが下支えになっているのかなと、ひとつの線につながるようになってまいりました。きっと現場ではとっくに得られている手応えなのでしょうね。

ダートで見たかったサンデー産駒かぁ。個人的には直仔より1代経た方がイメージしやすいですかねー。直仔ならアグネスタキオン、孫の代ならダイワスカーレットキタサンブラック、かな。ダイワスカーレットフェブラリーSという話が実際に出ていましたよね。この3頭がドバイのダートを走っていたら。ねぇ。

参考までに、サンデーサイレンス種牡馬成績はこちら。主な産駒の右下「もっと見る」リンクから獲得賞金順に産駒一覧が確認できます。ダートを走ったら、でイメージしながら眺めると新鮮ですね。

www.jbis.or.jp

なお、ダートのスピード化に関しては少し見解が異なっているのですが、これはまだ終えていない「国際化」の議論でまとめてみようと思っています。

最後に

多少、内容の抜粋をしながら書きましたが、やはり映像と雑誌と、それぞれ直接見ていただくのがベストと思います。平成という括りにあまり必然性を感じてこなかったのですが、相当な変化や歴史の堆積を感じ取ることができると思います。ぜひぜひご確認くださいませ。