more than a SCORE

1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

ダービー

ロジャーバローズがダービーレコードで押し切りました。

1000m通過タイムでどよめくスタンド。リオンリオンの思い切った逃げはさすがに前傾が過ぎていましたが、ロジャーバローズのフットワークは力まず緩まず、程よいストライドで走っているように見えました。鞍上浜中の思惑も「ある程度流れる競馬」。逃げ馬が飛ばしたことも奏功しての単騎の2番手、上手くいきましたね。

浜中は残り600のハロン棒を目安にしたでしょう、残り3ハロンを目いっぱいつかってのロングスパート。ロジャーバローズの上がり、mahmoudさんの計測では11.5-11.6-12.0。2番手追走から11.5で引き離す地力と、高速馬場最大の特徴と言っていいラスト1ハロン失速幅の少なさがレースを制した大きな要因と思っています。

同様にロジャーバローズの前半-中盤-後半のラップ計測を引用すると、47.5-48.1-47.0。サートゥルナーリアが49.2-48.2-45.7とのことですので、これだけ前々で加減速少なく速めのラップを刻まれれば、後続はなす術がなかったでしょう。溜めて切れても前が残る、という表現が端的でしょうか。

鞍下の特徴を前走で捉えて、2着じゃだめだと言い切った浜中。継続騎乗の賜物といえるレースプランだったと思います。お見事でした。

公式レースラップ

12.7-10.7-11.4-11.4-11.6-12.0-12.3-12.4-12.2-12.0-11.9-12.0

比較になるかな。ディープブリランテのダービーはこちら。残り600からの勝ち馬のロングスパートは符合しますね。
12.8-10.8-12.0-11.7-11.8-11.7-12.2-12.4-12.3-11.7-12.0-12.4

リオンリオン横山武史の強烈なトライ

外枠に当たってしまいましたが、横山武史は思い切りのよい逃げを見せてくれました。1、2コーナーの11.4-11.4は強烈ですね。ここを噴かしながら進められるのは胆力と経験の両立というべきでしょうか。3コーナー前後でようやく少し緩めていますが、どうやらセーフティリードを取りながら進めたかった模様。思惑通りの単騎逃げにはなりました。

横山典弘の騎乗停止で回ってきたチャンス。父から子への青葉賞馬のリレーは情緒だけではなく。小倉と新潟のリーディングを取った20歳の若手にダービー初騎乗のチャンスは決して不釣り合いなものではないでしょう。当事者間の細かいニュアンスは知りようもないですが、松永幹夫調教師の粋な采配と受け止めることにしております。それが心地よいですね。

公式レースラップで1000m通過は56.8。それで直線坂下までは踏ん張っていましたから大善戦と評価すべきでしょう。本人には悔しさで受け止めておいてもらって、後年語り草になるようなジョッキーになっていってほしいと思っております。陣営含めてナイストライでした。

ロジャーバローズは高速馬場を味方に

冒頭で書いたことがほとんどですが、人気がなかったからこそ思い切った騎乗ができたとも言えますし、浜中だからこそこれだけ思い切った騎乗ができたとも言えそうです。変に温存しない戦略は大一番ほど取れそうで取れないものと理解しています。どういう展開でも崩れる確率の低い馬が勝ち馬とは限りませんからね、この戦略に賭けた人馬の勝利と思います。

高速馬場への適性を低く見積もってしまったのが個人的な反省点。もう少し失速ラップになって、結局3強、いや1強、という結果をイメージしていました。布石は前走京都新聞杯に合ったんですけどね。3コーナーを待たずに後続に絡まれてなお、直線の11.5で他馬を突き放していますからね。後方待機したレッドジェニアルには交わされたものの僅差。この時点で速い馬場での先行策、そのシミュレーションが十分できていたのでしょう。

ロジャーバローズの凱旋門賞への適性?

ただし、翻せば、それ以外の条件での適性はまだ未知数。土曜に正式な参戦発表が報道されていましたが、この段階で凱旋門賞に「行くしかない」とは少し願望込みの判断かなというのが率直な感想です。パリロンシャンの2400mで単騎逃げ?上手く嵌るでしょうか。

個人的にはドバイワールドカップが面白いように思っています。もう少しパワーがついてくれば、あの息の長さはメイダンの長直線で活きるのではないかなと。馬場適性というハードルは越えなければいけませんけどね。日本ダービードバイワールドカップがつながる瞬間、見てみたいと思っています。単なる思い付きではありますが、書いててワクワクしてきました。

ダノンキングリーは戸崎の先行策が見事

内枠スタートからお手本のようなポジション確保でした。出していって好位の内を取って前がかるのを抑えてなだめて。ワンアンドオンリー横山をもう少しスマートにしたようなイメージ、よく似ている戦略があったと思っています。

3強の中ではもっとも前のポジショニング。ロジャーバローズが最適なペースで運んでいますから、それに近いポジションを確保していないと勝負は厳しくなってしまいますね。外野が後から振り返ればこうやって語れますが、リアルタイムでポジショニングすることの難しさは推して知るべし、でしょう。戸崎のファインプレーと思います。

直線は難しい判断になりました。ロジャーバローズの外から末脚を伸ばしましたが、右鞭は0回。基本的にヴェロックスとサートゥルナーリアを待って併せるイメージがあったのでしょう。そりゃそうですよね。馬場のよいところを通るイメージもあったように推察します。結果、ロジャーバローズに併せに行くことはありませんでした。…併せていたら、相手にもっと頑張られたかもしれませんけどね。

サートゥルナーリアの敗因

現地のターフビジョンには待避所から出るあたりでチャカチャカし始めるサートゥルナーリアの姿が映っていました。首をブンブンするアクションが見えるたびにスタンドのざわつきが大きくなっていましたね。パドックでの落ち着いた様子からは想像しがたいテンションでした。

エピファネイア弥生賞リオンディーズ皐月賞で気性の難しさを見せた敗戦。すべてを血に還元してしまうのは語るに易いなぁと思いつつも、母シーザリオはこうした気性を内包しているのでしょう。ただ、皐月賞でも仕上げられなかった馬体、今回はかなり仕上げてきました。サートゥルナーリア自身も心身共にきっちり仕上がった状態で当日の気温の高さ、そしてスタンドの熱狂を間近にしたとき、平静でいられなくなったというのも無理からぬところと思います。パッと浮かんだのはフサイチホウオーでしたが、あそこまでパニック状況にはなっていないとも見て取っていました。

直接的な敗因はスタートと4コーナーだと受け取っています。あ、いや、4コーナーの外への展開も、辿ればスタートに行きつきますね。

落ち着かないテンションのままゲートイン、スタート直前はゲートにもたれつつ首が下がった状態になっています。レーンが手綱で起こしたタイミングでゲートが開きましたが、今度はカラダを跳ね上げてしまいました。…どうしてスターターがあのタイミングでゲートを開けたのかはちょっと疑問ですけどね。

後手に回ったスタート直後、マイネルサーパスと進路が被り、それを交わしたところでランフォザローゼスに外から進路を閉められて1コーナーを迎えました。1コーナーまでの距離が短く、前に行きたい馬が内枠と外枠から主張すると、どうしても真ん中に近い枠の馬はちょっとした後手で大きくポジションを下げてしまいやすいですね。

ダミアン・レーンはレース中、ずっと焦りと戦っていたでしょうか。ダービー1番人気で出遅れ、という条件下でよく破綻せずにレースを進められたな、と思っています。が、直線の少し手前、4コーナーでシュヴァルツリーゼを外からパスするタイミングは正直得策ではなかったでしょう。直線に向いて、1、2着馬との差を見ればコーナーワークの影響の大きさが見て取れます。

ハンデ差を埋めるための直線の末脚、mahmoudさんのツイートでは11.1-11.1-11.9。それまでがシュヴァルツリーゼの真後ろで控えていましたから、かなり急な加速になったと思われます。ラストの失速はこの急加速が要因のひとつでしょう。後手に回った結果、脚の使いどころがズレてしまったというのがわかりやすい表現になるでしょうか。

末脚を活かせるポジショニングがあれば勝ち切れたように思うのは、贔屓目ではないと思いたいですけどね。

レーン騎乗のたられば

治郎丸さんは自身のブログとツイートで、1、2コーナーでインにいれるタイミングがあったと指摘していました。これに関してはもう、当事者にこの件をぶつけない前提で、ファンに許された「たられば」としか言いようがないと思っています。個人的には、あのタイミングでインに入るのはギャンブルであったでしょう。

人気薄の逃げ馬が引っ張っていますからね、エアスピネル武豊の誘いにマカヒキ川田が乗らなかったように、前が詰まるリスクを負ってインに飛び込むのはなかなか難しいでしょう。まして日本で3カ月も乗っておらず、乗り替わりで初めて乗った馬ではよりギャンブル性が高まります。

おそらく陣営の戦略は直線外に、だったのでしょう。レーンの中では、不利からのリカバリーとしてのイン<能力と戦前の戦略を信じて外、だったのではないでしょうか。治郎丸さんが指摘した地点でレーンにとっては「インに入らない」という選択が妥当だったと推察します。

個人的には、サートゥルナーリアとのコンタクトにたらればを感じています。1週前追い切りに一度乗っていましたが、直線半ばまでもっていかれ気味、一度手綱を握りそこなう場面もありました。コンタクトはしたものの折り合うまでには至らなかったと映ります。こちらも馬の強さを信じたかったのかな、許容範囲と思って大きくは受け止めていなかったのですが、十分な信頼関係が築ける時間と内容ではなかったでしょう。

馬自身のテンションが上がってしまったレース直前の状況下で、サートゥルナーリアにとってダミアン・レーンは頼れる相手ではなかったかも、という仮説が浮かんでいます。もし、もう少しレーンとコンタクトする時間が取れていれば、レース前のテンションはスタートに影響がない程度に抑えられていたかもしれません。…めちゃめちゃたらればですけどね。

デムーロからルメールへのスイッチは折り合いが遠因?という雑な推測

仮説が仮説を呼びますが、この折り合いに万全を期す意図が働いたのなら、アドマイヤマーズという理由も含めてデムーロ降板という判断が早期になされたのも納得できるところではあります。リオンディーズの気性を制御しきれなかった鞍上に弟を託すことができるか。より折り合いに不安の少ないファーストジョッキーに白羽の矢が立つというなら、それはオーナーシップとしては妥当な判断の範疇と思われます。

結果的にルメールでダービーに向かうことができなかったわけで、それは皮肉というべきなのでしょうし、それならデビューのタイミングからルメール指名であるべきだったでしょうし。すべては仮説の息を出ませんけれども。

サートゥルナーリアは凱旋門賞回避、秋は国内だとすると

思いが過ぎた「たられば」分析はひとまずおいて。あの気性を考慮しての遠征回避、秋はどうなるでしょうか。菊花賞天皇賞、どちらに向かっても楽しみには違いないですけどね。ただ天皇賞に向かうとなると、ルメールが騎乗できない可能性を再び考慮しなければいけないかも。少なくともアーモンドアイ、レイデオロがバッティングしますものね。

個人的には、レースまでの気性のコントロールに問題があるだけなら、鞍上武豊でみてみたいと思っていますがどうでしょう。…これもたらればになるのかw

ヴェロックスは川田がバランスよい騎乗

仕上がっていましたね。3強の比較ではパドックで一番仕上がって見えました。外厩を使用しない中内田厩舎のチャレンジ、その意図はどのあたりにあるのかなと言葉を巡らせながら、締まった馬体を眺めておりました。

予想にあたって、大きなポイントは川田の3、4コーナーに動きにあると思っていました。ここで早くヴェロックスが動けば、というより動かなければ勝ちはないだろうと考えていました。サートゥルナーリアより勝つための展開にスイートスポット感があるという見解。果たして、その答え合わせができた結果と言えるか、ちょっと微妙な内容ではありますね。

川田の勝負はやはり後ろ、後手を踏んだサートゥルナーリアにあったのでしょう。3、4コーナーでの運び方は前を視野に入れつつサートゥルナーリアをけん制しているように見えます。そのバランスの良さこそリーディングジョッキーらしい視野、戦術眼と受け取っていますが、ダービーを突き抜けるには至りませんでした。残念ながらすでにその時点で、勝てるポジションから離れたところでの攻防と言えますね。

ディープブリランテの年に似ていると書きましたが、結果的にヴェロックスとサートゥルナーリアはワールドエースゴールドシップに相似したレース展開になった印象があります。負けて強し。ヴェロックスもどこかでG1を獲る可能性十分でしょう。ぜひ順調に。

最後に

すでに安田記念当日という…。月末の一週間はかなり多忙でして、体調を崩しながら何とか乗り切りました。ダービー後の記事やツイートや回顧記事はむむむむっと読んではいたのですが、なかなか自分なりの言葉をまとめる余裕ができませんでしたね。あ、鳴尾記念でタニノフランケル本命だったのは体調のせいではなさそうですけど。

アーモンドアイとダノンプレミアム。すっかり単勝オッズは2強モードですが、どちらもこの馬場で外枠にはいったことがどうでますか。全幅の信頼をおけるまではいかないと感じています。3、4コーナーで外々を回るとなれば、なかなか厳しい展開を乗り越えなければならないでしょう。

ただ、グァンチャーレ、フィアーノロマーノ、アエロリットが先行馬ですものね。リオンリオン役もロジャーバローズ役もいないイメージ。2ターンでもないですしね。素直に2強を信じてみるのがよいようにも思っています。この見定めが明日の楽しみ、じっくり堪能したいと思っています。