more than a SCORE

1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

ヴィクトリアマイル

ノームコアの差し切り、日本レコードでの決着でした。ダミアン・レーンの好判断が光りましたね。

3コーナー手前から、前にラッキーライラック、内にレッドオルガ、外にカンタービレと、レーン包囲網といっていいようなぎっちりとした隊列。レーンが上手かったのは左右の馬に前にはいられないよう、首だけ残して追走できたことでしょうか。囲んでいる各馬の力量まで把握できていて、あの位置をキープしていたらお見事というほかありません。

直線は一瞬だけ、先週のルメールのように進路の確保が難しくなりましたが、外をけん制しつつ、直前のラッキーライラックがインを閉めに行くタイミングを見てその外へ。このペースに対して追い出しをワンテンポ遅らせる間合いにもなっていますから、ベストなタイミングだったといってよいのでしょう。

1600実績に乏しいのはこれまでのローテーションの妙。中山開幕週の紫苑Sでは1:58.0で快勝していますから、今日の速い時計にも対応できる素地は見せていました。

しかし、ダミアン・レーン。ドライバーとしての有能さが、継続騎乗も人馬のストーリーも上回ってしまった印象があります。短期免許で結果を出すジョッキー、いまに始まった話ではないんですけどね。

公式レースラップ

12.3-10.6-10.8-11.1-11.3-11.2-11.5-11.7

アエロリットの逃げが強烈

スタートよくアマルフィコースト坂井瑠星がハナに。個人的にはこの時点で馬券が終わったと思っていました(早すぎですね)。かなりのピッチで先行しつつ、スピードの出やすいコンディションを利して前を狙う瑠星の攻めは、最内枠を考慮してのものと受け取っています。前走はスローで粘り込んでいましたが、この戦略も的外れではないでしょう。

アエロリットがこのペースを深追いするとは思いませんでした。3、4ハロン目のラップからは、いったん緩めてという意図があまりなかったように映ります。馬が気分よく進めることを優先したにしても、1000m通過56.1はかっとび過ぎでしょう。上がりを34.8でまとめて5着に残ったのは馬の地力。番手で他馬のペースにお付き合いするよりは行くだけ行って、という展開利待ちの腹の括り方があったように思っています。そういう勝負をする馬かなぁ、という疑問符はついておりますが。

ラッキーライラックはペースを受けての横綱競馬

石橋脩のリベンジ、その意気込みはこの展開では少し前のめりに働いてしまいました。前走が出負けからの後手後手でしたから、捲土重来、わるくても先行策という思惑だったでしょう。

ミッキーチャームが前に入るあたりで少し息がはいったかもしれませんが、ペースに対するメリハリをつけ切れないまま、直線の攻防になだれ込んだように見えています。踏ん張り切れなかった要因はここにあるでしょうね。それでも直線半ばで抜け出してきた姿は背負うべきものを背負った実力馬のそれだったと思います。

レーンのペース読みはかなりの精緻さ

個人的に先週のグルーヴィットは恨み節満載でしたが、この土日で見せられたのはペースに対する判断のよさだと思っています。周囲を囲まれながらのヴィクトリアマイルより、日曜最終のイーグルバローズの方がレーンの持ち味が活きたレースだったでしょう。あの出来、あの出遅れから、直線までの物理的&精神的誘導、そして末脚を引き出すアクション。

京王杯のタワーオブロンドンしかり、夏木立賞のヴァンランディしかり、実力上位の差し馬に乗せてペースに対応するという条件なら十分信頼に足るという認識をもつに至っています。…新潟2000の重賞で一発回答を出しているわけですから、いまさらという感もありますけどね。

ただ、逃げるなり先行なりで、ペースを作る立場になった際のパフォーマンスにはまだ半信半疑の面が残っていまして。コントラチェックを疑いつつ、サートゥルナーリアは大丈夫では、というのが現状の見立てです。あー、必ず勝てる、ではなく、ジョッキーによる過剰な能力のスポイルはないだろうという見立てですね。

レーン礼賛ムードにひと言

何と言いますか、いまのところ本人にあまり強烈な野心を感じないんですよね。割と淡々と、先入観なく来た球を的確に打ち返していったらG1を勝ちました、というように見えていまして。今回の結果を受けて、レーン旋風なり神騎乗なりと持ち上げる報道もあるかと思いますが(全く否定はしませんけどね)、そういうキャッチーな言葉は半分くらいで受け止めておくのが妥当と思っています。

これからいろいろと日本競馬のあれこれを理解して、周囲から分析されプレッシャーを受けてなお実績を残し続けられるかはまだまだ未知数でしょう。その意味でルメールが確立していった評価は、非常に価値のあるものと理解するところです。騎乗停止中ですけど。

ルメール→レーンへの乗り替わりで噴出した問題といいますか、ジョッキーの選択に関する議論は別のタイミングで。個人的には、ひとの側の都合で馬の実力をスポイルする乗り替わりにはならないでほしい、という点を優先的に考えています。

プリモシーンはペースを逸らしての追い込み

ダービー卿CTの再現のような運び方だったという言い方が一番適当なように思っています。福永もそれが一番馬の力を引き出せると思っていたのでしょう。先行馬がやり合ったあとの福永、というのもこれまでの経験則に合致します。

この馬場に上手くフィットする回転の速いフォームなのは違いないんですけどね。馬のパフォーマンスが安定してきたのは仕上げる陣営の力でしょう。

プリモシーン陣営を揶揄する意図はありませんが、予想にあたっての個人的なレース像は、アエロリットが粘り切れず、プリモシーンが差し切れないとするなら勝ち馬はどれか、というものでした。

粘りにしろ切れにしろ、どちらもラスト1ハロンを強くフィニッシュできるだけの決め手に欠けるイメージがあったためです。その先入観をあえてつくって、勝ち馬を探してみたら、勝ち馬いなかったんですよねw で、わずかな可能性に賭けてのアマルフィコースト本命になっちゃったわけなのですけれども。

アマルフィコーストはスタートで出し過ぎ

最内枠ですからある程度出していって、好位のインで控えられるだろうと考えていました。が、他馬が控え気味の中、スタートを決めてビッとダッシュを効かせたことがアダになったかな。予想の段階ではクロコスミア的な立ち回りを期待していたんですけどね。

アエロリットがペースを引っ張ったこと、ミッキーチャームが並んできたことで、控える場面がなくなってしまった印象があります。せっかくとった好位を明け渡しては意味がなくなってしまいますからね。できるならもっと柔軟に、スタート直後に1馬身ほど後ろ、クロコスミアに前に入られない程度の先行策だったら、と思っています。前にはいられないように首だけいれておく、というはコントロールが難しいのでしょうね。

ええ、そもそも実力が足りていないというツッコミも予想の前後を問わず、心の中ではずっとはいっております。前走狙ったのは合っていたはずなんですけどね。

ソウルスターリングは鞍上の先行策が奏功

よく先行しましたね。スタートから出していって、アエロリットのプッシュに一度様子を見て、少し促してラッキーライラックの横を取りました。フォームから見て速い上がりに対応できるかは疑問符がついていましたし、ほぼその通りの結果にはなりましたが、ここのところのパフォーマンスからすれば大きく良化したといっていいのでしょう。

適鞍がなかなか見当たらないイメージですが、マーメイドS宝塚記念で、少し時計を要するコンディションなら狙ってみたいと思っています。札幌でも面白そう。実力馬の復活、もう少し期待してみたいと思います。ぜひ継続騎乗で。

最後に

パドックの見立てにズレを見つけた件を少しだけ。全く持って個人的なピントの合わせ方に関する話なのですが、G1のパドックでは総排気量の大きい馬を見極めるというイメージを持っています。具体的には胸の容積が大きいことと、トモの容積が大きく筋肉量も十分であること。あまり力を伴わずに推進して歩けていること。…言葉にするとちょっとずれますね。

酸素の供給量が多いということはそれだけ体内でのエネルギー変換量が大きいと理解できますので、運動の強度を上げた分それを反映できる個体であるということかなと。そうすると強度が十分なトレーニングができた場合、コンパクトにまとまらず、全体的に膨らんだ馬体になるのだろうと考えています。G1のラスト1ハロンを粘り込むにはここがポイントになるとイメージしていました。

ただし、高速馬場での究極のスピード勝負になると、膨らんだ馬体の自重が最後に堪えてしまうのではと思い至ったんですよね。そういえばヴィクトリアマイルって、少し小柄な馬がゴール前で切れを発揮して勝つケースが散見されていますし。

あーこれは先入観の補正が要るなー、とG1のパドックを見ながら勝手に反省会が始まってしまった次第です。

そういえばここ数年は毎年パドックに立っている割に、あまり馬券につながっていないんですよね。突破口が見えた気がしていますがどうでしょう。とりあえずパドック映像も含めて、見直す時間を設けようと思っています。