more than a SCORE

1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

天皇賞(春)

フィエールマンが直線のマッチレースを制しました。

1周目のスタンド前、2コーナー、3コーナーと徐々にポジションを上げていくルメール。フィエールマンの走力や折り合いの良さが前提になるのはもちろんですが、この徐々に上がっていくというプランを事前に提示できていたことが最大の勝因と思っています。ルメールはこれで八大競走制覇、いまそれを成し遂げるに必要なヘッドワークということなのでしょうね。

長距離に限った話ではありませんが、ポジションを取りに行く力、そして取ったポジションをスタミナロスを抑えてキープする力。ポジショニングの柔軟さは勝負の仕方に幅を生みますね。2ターン以上あるG1ではこうした能力が問われるレースになりやすいと感じます。ダービーとジャパンカップの1コーナーが象徴的でしょうか。

ジョッキーがどうペースを感受しどこでポジションを取り合うのか。そのためにはよく馴致されていることとよく鍛え上げられていること、フィジカルとメンタルのバランスが問われます。無尽蔵のスタミナで他馬を順々に振り落としていくようなへヴィステイヤーを絶対視するとアレですが、長距離戦の醍醐味はこのあたりにも見出せるなぁと、改めて思うに至っております。

公式レースラップ+α

12.9-11.5-11.6-11.6-12.2-12.2-12.5-13.8-13.3-12.4-12.5-12.3-11.7-11.6-11.0-11.9

mahmoudさんの計測ラップ、ツイートされていました。13.1-13.3のあたりは体感したものと近いですね。1コーナーを待たずにペースは落ちたと受け取っています。
12.8-11.5-11.8-11.8-11.9-12.2-13.1-13.3-13.3-12.4-12.4-12.3-11.7-11.6-11.3-11.6

また、比較として2006年の父ディープインパクトのレースラップを。ラップ構成、似ていますね。
13.0-11.7-11.5-11.9-12.2-12.2-12.0-13.2-12.6-12.7-12.9-12.7-11.3-11.0-11.2-11.3

ヴォージュの逃げはなかなかタフ

メイショウテッコンと大外ロードヴァンドール、2頭が緩めない展開を作るのではと思っていましたが、ヴォージュが自ら厳しい逃げに持ち込んだ面もありましたね。少なくとも2~4ハロン目が攻めたラップ、1ハロンだけ速いわけでないあたりにヴォージュの特徴を押さえた和田の攻め方が見て取れます。横山が見た目にわかりやすい逃げを打つイメージをもっていましたが、このラップだと終始2番手は納得するところです。

向こう正面からカフジプリンスが主張、メイショウテッコンが煽られる格好で前をけん制する流れになりました。ここから直線まで一貫した加速ラップ。先手に厳しい急、緩、急の流れができあがりました。その上にラスト400からは11秒前半のハイラップが求められますから、着差が大きく開いたのも頷けます。

結果的にメイショウとロードは大敗、ヴォージュはゴールに辿り着けませんでしたから、厳しかったですね。和田が完走を捨てて止めた判断は尊重したいと思います。

フィエールマンのパワーアップ

パドック映像でみたフィエールマンのトモ。ディープっぽい斜尻の好みは分かれそうですが、しっかりパンプアップしてきましたねー。元々脚の回転の速さに特徴をみていましたが、ここに力強さが加わったと見て取りました。それだけのトレーニングを積んで、かつ久々の競馬であの落ち着きでしたから、パドックでの印象はよかったですね。

当日は府中で観ていたのですが、有力馬の返し馬VTRはウインズだからこそ(グリーンチャンネルでは流しているのかな)。ここでフィエールマンの映像を確認して本命を固めました。パワフルでしたねー。

自分なりに大事にしている着眼点のひとつなのですが、軽く流している1完歩が他馬のそれに比べて推進していること。…言葉にしにくいそれですけどね、まぁまぁ外していない表現と思います。軽い推進を担保するパワー、ここが以前のイメージと比較しても大きく上回っている印象でした。

ルメールのポジショニングの妙

先行勢がラップを引っ張る1周目の3、4コーナーをじわっと進めたのは納得するところなのですが、スタンド前でグローリーヴェイズをパスしたのはびっくりしました。ある意味ここが一番攻めた瞬間のように思っています。スタンドの歓声もありますのでリズム重視でいきたい場面ですからね。でも、ここでパスしたことが、その後のポジショニングについてアドバンテージを呼び込んでいるように見えています。

3コーナーの登りからこちら、4コーナーの下りで加速する力は素晴らしいものがありました。下る力だけでいえばグローリーヴェイズも遜色ないと思いますが、ここでポジションを取っていることが効いたと見ています。最後のマッチレースを制するために、このポジションアップの判断は大きかったでしょうね。

ローテーションは個体の充実にフォーカスしたものと推察

デビューからここまで、きっちりほぼ3カ月の間隔を空けながらの出走。意地になっているといってもいいくらい、3カ月ですね。

www.jbis.or.jp

考えられるのは、目標を定めながらも、レースとレースの間の調整パターンを変えずに個体への負担を抑えた、ということ。目標レースに合わせた調整を優先しなかったように見えています。それだけ馬体の成長がゆっくりであることへの配慮があったのでしょう。

最近は使い分けというバズワードが闊歩しておりますが、その真偽はともかく、少なくともこのローテーションはそれに当たらないだろうと個人的には受け取っています。G1でなくてもAJCCではダンビュライトと走っていますしね。

4戦目で菊花賞制覇、6戦目で天皇賞(春)制覇。結果が伴ったことで、トライアルを使わずにG1へ向かうモデルケースのひとつになっていくかもしれません。が、いまのノーザンファームはそうした形式的なモデルに囚われないアップデートを続けているように見えています。

しばらくはレース番組とギャップのある有力馬のローテーションを目にすることになるのでしょう。外厩の情報と分析がより目にしやすくなることも期待したいですね。

ディープインパクト産駒、八大競走制覇

レース後の報道で気が付き、父ディープの天皇賞春を振り返ったのはGWの時間の余裕があればこそ。先のレースラップの相似形もその賜物ですね。父仔とも下りで先頭に立っている加速力に符合を覚えていたのですが、レースの進め方がエタリオウでしたから、父の方が印象は強烈です。ぜひ映像でご確認いただければ。

種牡馬として八大競走制覇。これはヒンドスタン、パーソロンサンデーサイレンスに続いて4頭目、歴史的な名馬に肩を並べる記録となりました。正直まだだったのかという印象ですが、そうですねサトノダイヤモンド春天勝っていなかったんですよねという個人的な思い入れから来る錯誤がございましたね、はい。

あー、このご時勢に八大競走という語り口がどれほどの実が伴うのか、という思いもあります。パート1国入りに寄らず、G1からひとつも降格せずにいまだ価値を保っている歴史の堆積は、日本の競馬がその価値を認めてきたことを示唆しているのでしょう。あんまり元号で語るとアレかなぁとは思いつつ、昭和から平成、令和を橋渡しする価値のひとつとして、名実を保たせながら語っていくのがよいように思っています。

グローリーヴェイズは善戦

乗り替わりで3200mのG1、そしてシャケトラで阪神大賞典を勝つまで長距離重賞に実績のなかった戸崎。馬の適性と充実は理解しつつも、この点が気になって本命評価はできませんでした。

でもこちらが構えていた以上に上手く立ち回りだったと思っています。コーナー通過順位は9,8,7,2。フィエールマンが7,5,4,1ですから、しっかり追いかけながら競馬を進めたことが窺えます。スタンド前でパスされて以降は、逆に目標にできるメリットがあったといえそうですね。個人的には着差以上のクビ差と思っていますが、直線の粘りも素晴らしく。好パフォーマンスでした。

G1で十分に力を示した格好ですが、気になる点はこのあとのローテーション。京都に特化した戦歴と期待に違わぬ京都適性を示してきたことが、このあとのレース選択を悩ませる材料でもあるようにも思っています。

エタリオウ、デムーロの戦略

デムーロ、腹をくくっての待機策だったようです。残り1000mからのロングスパートはもはやお家芸という認識ですし(コースは異なりますが前走日経賞しかり、ヴィクトワールピサ有馬記念しかり)。結果的に実を結ばず、直線パフォーマプロミスに交わされての4着となってしまいました。

前走日経賞ではスタートから出していった分、スタンド前ではかなり引っ張る格好に。その上での早めスパートで逃げ馬の追走しての息切れ2着でしたから、その反省があの待機策につながったものと納得はしています。

netkeibaではデムーロ自身がレース回顧していますね。どうやら1、2着馬との力の差を事前に感じ取ってイチかバチかの待機策を選択した模様。でもなー、この理由を聞くとジョッキーの消極的なマインドが覗く気もしていまして。リオンディーズの朝日杯しかり、確かに勝つための戦略として後方待機を選ぶジョッキーではあります。でも本当に力の差があったのかというと…。

仮に折り合いに配慮した上で勝負するなら、前走日経賞で待機策に徹しておくべきでしょう。今回はトライアルの折り合い難が本番の不安材料になってしまったわけで。継続騎乗を前提にしていないならともかく、昨秋から手綱を取っているわけですからね。

このあたりに近々の精彩を欠くように見える場面が重なってしまいます。スランプとは言い切れませんが、本人の中で噛み合っているのかな。焦り?来週のNHKマイルカップになかなか難しい宿題がでたようにも感じています。

エタリオウとゴールドシップ

mahmoudさんのツイートでは、2015年のゴールドシップとのラップ比較が行われていました。前半の位置取り、スパートのタイミングに相似形を見出しての数値比較は面白いアプローチだなぁと思って拝見しておりました。同じステイゴールド産駒でしたしね。

もちろんそれぞれ、待機策に至った経緯や狙いは異なっています。ただ結果につながったゴールドシップとの比較から京都3200の特性など得られるものも大きいでしょう。

レースは異なっていますが、菊花賞時のウインバリアシオンの方が今回のエタリオウに近しい例にあたると思っています。当時のアンカツはある意味勝ちを捨てての2着だったのに対して、エタリオウのデムーロは勝負にいっての4着だったことが大きな相違点でしょうね。

最後に

〆切直前まで予想をしていたのですが、シャケトラがいたらもっと展開予想が難しくも面白かっただろうなと、ふと。録画していたフジの中継でも(関テレの返し馬実況ですね)シャケトラを紹介していましたね。個人的にはこの天皇賞で結果はでていなかったという見立てなのですが、無事にレースに参加してほしかったなと。ファンファーレを待つ間にふっと思ったことは書いておきたいと思いました。

一方、フィエールマンは凱旋門賞の一次登録を済ませています。これまでの3カ月間隔というわけにはいかないでしょうが、個体の体調と相談しての出否判断をお願いしたいです。…サートゥルナーリアと2頭で行く場合、鞍上がどうなるかも楽しみではありますね。

さて、粛々と令和を迎えつつ、自分に出した宿題をGW中に終わらせておきたいと思っています。3で止まっている国際化の話ですね。