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1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

コパノキッキングと藤田菜七子、初G1チャレンジ

初G1は後方一気で5着、掲示板に乗せるという結果でした。率直にナイスパフォーマンスだったと思っています。すごかったですね。

配慮の効いたオーナーシップ

事前にオーナーがインタビューを受けていまして、コパノキッキングと菜七子の相性について語っています。

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客寄せ的な見方もありますが、少なくともオーナーは名実を伴って騎乗依頼をしていることが窺えます。ネームヴァリューありきのG1騎乗は本人にとってマイナスである、ということも含めて、オーナーはしっかり配慮されていたようですね。

こと騎乗依頼に関しては、賢明なオーナーシップとは適切なオーダーをだせること、と常々思っているのですが、今回の依頼は結果も含めて適切なオーダーだったなぁと。…そういうオーナーに恵まれることもジョッキーの人徳というべきでしょう。

個人的には、自分でつかんだチャンスという武豊のコメントが最も妥当な表現ではないかと思っているところです。ご本人もアイドル的に扱われていた経験がありますしね。

コパノキッキングも初G1

よく考えたらコパノキッキングにとっても初G1チャレンジなんですよね。

それまでの戦歴を見ると、1600mは未経験、1400mまでしか経験がなく、前走の根岸Sが初の1400mでの勝利。追い込み競馬の鮮やかさと、逃げか追い込みでしか勝っていない不器用さ。パドックからチャカチャカするテンション。

こう書くと、初1600mの初G1で強くプッシュする材料にはどうしても乏しいですよね。テン乗り根岸Sを勝ったオイシン・マーフィーも、あと200m伸びることについては「No」と苦笑い気味に回答していました(フジの中継に音声ははいっていましたが、この時の表情が見たかったですね)。

菜七子にとってはなかなかハードルの高いチャレンジだったと受け止めるのが賢明でしょう。

後方待機はオーダーに沿ったもの

実際のレースでは、スタートからプッシュする意思は見せず、ラチに寄せていく意思も見せず。ひとつ外のノボバカラが前を横切りながら蹴り上げた砂を意識して交わし、その後ろに入れずに、砂を被らない外にポジショニング。そして、そのさらに外から距離をとって交わしていくノンコノユメにちょっと過剰に反応していました。

はい、相当乗り難しかっただろうと推察します。

マーフィーも馬群の外々を追走して、砂を被る場面を最小限に抑えていました。もともとチャカチャカしやすい気性。これを距離延長で勝たせるのは至難の業でしょう。

結果的にとった戦略はオーナーのコメント通り、最初の200mを捨てて1200mのレースにすること。基本的に最初の200mの導入はオーダーに沿ったものと思います。

直線までの待機は菜七子のファインプレー

オーナーのイメージと少し違うのはその後。サンライズノヴァの真後ろにはいって直線まで我慢したのは、菜七子のその場の判断がはいったと思われます。

ノンコノユメが外から捲ったことでコパノキッキングはかかり気味になってしまいました。相当敏感だなという感想はさておき、ここでサンライズノヴァの真後ろにポジショニング。そのまま3コーナーに入っていきます。

おそらくあのテンションのまま3、4コーナーでポジションをあげると、あまり制御が効かないまま力を早めに使ってしまったように想像ができます。レース半ばで引っかかった経験は、今後のレースにもマイナスの影響を及ぼす可能性があります。

物理的に前に行けないよう馬の後ろにいれて、直線までじっとする作戦は、イチかバチかというレース展開ではあります。が、今後制御の効かない馬になってしまうリスクを早々に回避したのは、とても冷静で賢明な判断であったでしょう。あらかじめ想定できたであろう状況とは言え、自身も初G1ですからね。

厳しい表現になるかもしれませんが、そうしたレース運びに条件がついてしまう馬は、その分勝利から遠ざかりやすいわけで。それをカバーして5着までもってきたわけですから、立派な騎乗と言えると思います。

勝てなかったのはインティと武豊のパフォーマンスが一枚上手

応援していた方からすると、勝てなかったのは至極残念ですよね。自分もファン歴の浅い頃は全力で悔しがっていましたから、とても察するところです。

あれだけ抑制の効いたラップですと、後方からMAXのスピードを出しても、前々のポジションでレースを進めた馬も力を温存していますから、どうしても後ろにいる分不利になるのはやむを得ず。菜七子はその負け方も含んで、レースに臨んでいたでしょう。陣営もそれを踏まえて声をかけていたはずです。

コパノキッキングのレースはしっかりできた上で、今回はインティの方が一枚上手だったというのが妥当な見立てと思っています。

厳しい条件を飲み込んでなお後方待機をやり切った胆力。ロスを抑えて直線外に展開し、末脚を存分に発揮させた判断と技術。総じて、ナイストライというのが率直な感想です。

…個人的に、コパノキッキングと自分のレースをしたいという菜七子のコメントに、ちょっとだけ引っかかりを覚えていました。攻める言葉でも守りに入る言葉でもありますのでね。レースを通してみると攻めの言葉であったのだろうと受け取っていまして、ホッとしています。守りに入る言葉やマインドはいつでも、ふっとやってきますので。はい、このあたりはいち中間管理職の実感でございます。

次走も継続騎乗

ブリーダーズカップへの意欲やかしわ記念など、マスコミ向けとも邪推できちゃうレース名が飛び交ったようですが、どうやら次走は菜七子継続騎乗で東京スプリントに落ち着いた模様です。

菜七子の経験のためという選択でもなく、コパノキッキングにとって適距離の1200m、結果が欲しい妥当なローテーションと受け取っています。

この人馬で大井の馬場をこなすことができるのか、という新しい見どころもできました。ファンの側の楽しみも継続となった格好で有難い限りです。花粉がまだ厳しそうな日程ですが、なんとか現地で観たいですね。