more than a SCORE

1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

天皇賞(秋)

レイデオロ古馬中距離路線をギュッとシメました。

 

菊花賞馬キセキの敢然とした逃げ。戦前は逃げ馬不在でスローペースが予見されていましたが、結果刻まれたペースはかなりタフなものとなりました。

レイデオロはこれを追走して1馬身以上の差を付けましたからね。スワーヴリチャードのパフォーマンスをノーカウントとすれば、いまいまの古馬中距離戦線には一定の結論がでたように思います。あ、3歳は除いてますよ。

公式レースラップ

12.9-11.5-11.8-11.5-11.7-11.6-11.3-10.9-11.6-12.0

Mahmoudさんの計測ラップ

以下、引用させていただきます。だいぶ印象が違いますね。
13.0-11.6-11.6-11.6-11.6-11.6-11.3-11.1-11.6-11.8

 

走破タイムは歴代2位

1:56.8は天皇賞秋では歴代2番目に速い走破タイム。1位は2011年トーセンジョーダンの1:56.1、個人的にはエクイターフ導入効果という点でエポックメイキングなレースだったと記憶しています。

前半59.4をハイペース?と勘ぐる向きもあるようですが、ポイントは一貫ラップだったことと引き締まった3、4コーナーでしょう。これを含めてハイペースと捉えるなら妥当だと思います。

川田の逃げる決断がペースを締める

本馬場入場でダンビュライトが放馬。戸崎の正座は悲哀に満ちたワンシーンになりましたが、人馬とも無事のようでこの点は何よりでした。ただし、これで何が逃げるかがより不明に。川田の決断がここからゲートインまでの短い時間であったなら、その胆力はたいしたものと思います。

暴走気味に向こう正面で先頭に立った日経賞がありましたから、逃げの戦略は取りにくいのではないかと思っていたんですけどね。

スタートから手綱をしごいてひとつ外のミッキーロケットをけん制しつつ、2コーナー過ぎに先頭に立ちました。2、3ハロン目で強く出していったのかと思っていたのですが、mahmoudさんのラップを見ると初速がついてからは一貫ラップだったことが窺えます。

3コーナーで緩めず、4コーナーを待たない加速。スタミナを振り絞るようなラップメイクがそこに見えます。「菊花賞馬としてのレースはできた」というコメントはこのあたりを指しているのかもしれません。ブレーキを踏まない判断は、ひとつ早くアクセルを踏む戦略は、技術もさることながら心の構えも大きいことでしょう。

川田将雅菊花賞馬、天皇賞秋での符合

トーセンジョーダン天皇賞、離れた2番手で事実上のペースメイカーだったのは、ビッグウィークに乗った川田将雅でした。「菊花賞馬らしいレース」というコメント、こちらからは7年越しでようやく形にできたように見えております。おそらくは偶然の符合なのでしょうが、こうした見方だと見応えが違いますね。

高速決着だと後方待機では届かない模様

トーセンジョーダンレイデオロ、どちらの天皇賞も、前半から相当突っ込んだラップでかつ後方待機では届かないという展開でした。トーセンジョーダンの3着はペルーサ、13番手から33.9で差し届きませんでしたし、今年のマカヒキは勝ち馬とコンマ1秒差の33.7で離れた7着でした。

一般的に道中で緩めるところがなければ、直線では前々の馬が失速するのはもちろんとして、中団で追走した馬もまた末脚が甘くなってしまいます。ハイペースの追い込みが決まるパターンと思われますが、勝ち馬はいずれも中団からの差し。

エクイターフ+強い筋力+強い心肺機能+ハイペース=中団からの差し

コンディションのよいエクイターフでは、強くグリップしなくても地面からの反力が得やすい=スピードが落ちにくいためバテてからの失速幅が少なくなるのでは、という推論をもっています。こう考えるようになったのはトーセンジョーダンがきっかけですね。

地面からの反力を受け続けてトップスピードを維持するには強い筋力が必要と考えられます。このあたり、陸上競技とタータントラックを引き合いに仮説を組み立てたことがありました。今でも有用かなと思っていますので以下ご参考まで。あ、エクイターフそのものの分析は近年のコジトモさんの書籍、レポートをしっかりめにご参照くださいませ。

keibadecade.blog98.fc2.com

2歳馬や条件馬など、強い筋力も高い心肺能力も持ち合わせていない個体はトップスピードを維持しきれずに失速してしまいやすい、というのは馬場を問わない見解でよいでしょうか。

これが古馬トップクラスですと、強いフィジカルを備えた個体にエクイターフの特徴が加わることで、末脚の失速幅が抑えられて先行馬が粘り込みやすくなり、一方でどんなペースでも追い込み脚質が嵌りにくくなる、のではないかと考えております。

シェーングランツは届きますがマカヒキは届かない、と表現するのは端的に過ぎるでしょうか。…今回マカヒキが本命でしたから、ブーメランで自分に返ってくる見解ですけどねw

良好な馬場コンデションかつ緩まない流れを勝ち切る条件は、おそらく中団でペースを受けられることなのでしょう。トーセンジョーダンダークシャドウレイデオロもサングレーザーも、先行馬群の後ろから緩めるところなく差し脚を持続させましたから。

中団のポジションを取って、着差をつけて勝ち切ったレイデオロのフィジカルですから、個人的には大いに讃えるべきと思っております。強いですね。

ルメールは3週連続G1勝利

勝利ジョッキーインタビューでも、本人は案外冷静なように見えますね。リーディングを独走していた頃の武豊に通じるようにも思います。こちらからは窺い知れないところですが、ルメール本人にしか手応えを感じることのできない視野があるのではないかなと。強い集中力といいますか、冷静と情熱の間といいますか、主観と俯瞰がぴたっと噛み合っているといいますか。

佐藤哲三のnetkeibaのコラムでは、自分の馬が思い通りに動かせていることが重要で(=ストレスが少ない)、展開は後付けなのではないか、と指摘しています。個人的には近いことを言いたいように感じたのですが、違うかな。

レースの流れが「よく見えている」はずですので「必然の勝ち」と「偶然の負け」を鋭敏に感じ取っているのではないでしょうか。という表現をいま思いつきました。字面からはかなり不遜な態度に見えますよね、普通は逆の表現をしますしね。

今年は京都でJBCが開催。JRA・G1という表現は何とも違和感を覚えていますが、今年はこの3つのG1も年間G1勝利数にカウントされるのかしら。最多勝タイの6勝を超える可能性はかなり高いでしょうね。

レイデオロの次走はルメール次第?

グランアレグリア阪神JFでなく、朝日杯を目指すことが発表されました。藤沢師曰く「牝馬で繊細な面があるので同じジョッキーに続けて乗ってもらう方がいい」。阪神ですと香港国際競走と重なるため、ですが、それだけ鞍上ルメールの価値が高まっていることを象徴する動きと受け取っています。

レイデオロもまた藤沢厩舎、まだ次走の報道はないようですが、ジャパンカップのアーモンドアイにぶつけてくるかが焦点になってしまっていますね。個人的には、初めて間隔をつめてオールカマーから天皇賞というローテを選択する判断にしたことから、さらに詰めてジャパンカップという可能性は低めでは、と思っていますが、どうなるでしょう。…来年のドバイを視野に入れるならジャパンカップもアリ、かな。

サングレーザーとモレイラのピント

道中はレイデオロの直後から、直線外に展開しての差し脚。モレイラはこの東京開催、同様のコース取りで2、3着まで押し上げての惜敗が多くみられたように思っています。何となくですが、必勝パターンを見つけるとかなり「こすってくる」タイプなのかな。アエロリットの毎日王冠よろしく、逃げてペースメイクしたほうが恐ろしいイメージですけどね。

サングレーザーはパドックで見た限りギリギリという馬体。これで激走しましたから、正直マイルチャンピオンシップまでに疲労を取り切れるか心配です。先に書いた通り、エクイターフを叩き続けたわけですのでね。

スワーヴリチャードはノーチャンスで惨敗

スタートがすべてでしたね。マカヒキが寄れて接触、直後にレイデオロマカヒキに前方を塞がれる形になりました。スタートダッシュに失敗したうえに2コーナーまでに距離がありませんから、序盤でポジションをリカバリーするチャンスはほぼありませんでした。

その後はマカヒキ武豊の徹底マーク。最内に滑り込んだのがアダになってしまいました。3、4コーナー中間の蓋は厳しかったですね。そのまま直線では無理せず、流した分着順も見栄えがしない形になりました。

パドックではレイデオロマカヒキの間。少し小さく見えたのは休み明けの仕上げでパンプアップの余地が残っていたせいか、格を示す所作が見られなかったせいか。当日の馬場でスピードを出すには少し筋力不足と見ていました。当たったかどうかは次走ジャパンカップで答え合わせできる、かもしれません。

ただ、使ってよくなるタイプだと認識してはいますが、このレースを使ったといえる内容だったかというと。。。 次につながりにくい、消化不良のレースになってしまったと思っています。

マカヒキの差し脚には複雑な感情が

ぶつけたぶつけられたという一方的な関係性ではなかったでしょう。結果的にスワーヴリチャードとの接触マカヒキ自身もよれを立て直しているように見えました。その分縦のポジションは望むことができなかったでしょう。

「ペースが緩むところがなくて脚をためられなかった」「ラストもギアが入らない感じ」という鞍上のコメントは、ハイペースの追走では持ち味が活きないことを示唆しているように聞こえます。

パドックではやれると思わせる出来だったんですけどね。川田の胆力を読み切れずに拮抗してペースが上がらないほうに賭けてのマカヒキ本命でしたから、ただただ完敗でした。

スペシャルウィークアドマイヤベガクロフネタニノギムレットディープインパクトキズナ武豊は後方待機から外を回して府中のG1を差し切ってきたんですよね。G3ならハットトリックスズカフェニックス東京新聞杯が浮かびます。

「エクイターフ+強い筋力+強い心肺機能+ハイペース」のセットに、あの鮮やかな差し切りは少なくとも必勝パターンではなくなっているのかなと。平成最後の天皇賞、かつての必勝パターンは勝ち馬と遜色ない上がりで7着が精いっぱいでしたから。

なにやら平成が過去になる象徴のように思えてしまいまして。それを本命にしたんだよな、と当日の夜は何とも言えない感傷がありました。

もう大丈夫ですよ。アップデートすることで楽しみ方を広げるぞと思い直しておりますです。

最後に

この記事の冒頭、「シメる」と書いてふと英訳を辿ってみました。どうやら適当な訳がなさそうですね。スラングであるのかな。

お酒の席など、締めくくるという意味で用いる場合はfinish offがよさそうなのですが、威圧をともなうアレですのでdominateがまだ近いように思っています。首位に立つという時の表現と理解していますが、威圧、制圧、支配というニュアンスが含まれるようですね。

海外の競馬ニュースサイトだとレース結果の記事でこの表現を目にします。「Rey de Oro dominates Tenno Sho Autumn」みたいな感じ。今回は勝ち馬が「黄金の王」だけによりふさわしく響くように思いました。