more than a SCORE

1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

秋華賞

アーモンドアイ、3冠達成いたしました。素晴らしい末脚でした。

 

3、4コーナーの中間あたり、ミッキーチャームの手応えから逃げ切りあるかも?というもうひとつのわくわく感がプラスされました。その分直線の差し脚は鮮やかに見えましたね。

史上5頭目メジロラモーヌ以外はすべてリアルタイムで観戦していますが、終わってみればこれまでで最もライバルを圧倒するパフォーマンスでの3冠達成だったように思います。

公式レースラップ

12.1-10.9-12.7-12.1-11.8-11.9-11.8-11.5-11.8-11.9

アーモンドアイはかなり後方待機

悪くないスタートから終始ゴージャスランチの真後ろで折り合いに専念する形。先行馬が揃っていたこともあるのでしょうが、前半から急かす想定はなかったようですね。あまりインに寄せず、道中馬群の外を追走できるようエスコートしていました。結果、馬群の後方ですがインから3列目、捲られないポジションに収めることができた、と見えています。

ゴージャスランチとの静かな駆け引き

横山がどのくらい意図したものかは不明ですが、向こう正面でのちょっとした間のお話。サヤカチャンのインで向こう正面を迎えたラッキーライラック北村友一は少しずつポジションを下げながらサヤカチャンの外へ回り込むアクションを開始しました。

これを斜め前に見ていたゴージャスランチはセーフティな距離を取りながらもうひとつ外へ膨れるアクションに。横山の挙動から意図した誘導であると見ています。この一連の動きの結果、3コーナーにはいる直前、アーモンドアイの目の前に空間が出現することとなりました。ラッキーライラックの直後かつゴージャスランチの内、ですね。ほんとに一瞬です。

これを偶然の産物と捉えるか、横山の「誘い水」と捉えるかは議論が分かれるところでしょう。個人的には両方、だと思っています。

もしルメールが少しでもポジションを上げたい意図があれば、ここに飛び込む選択もあったかもしれません。3、4コーナーで1列外を回らなくて済みますので。冷静に判断をするだけの間はあったと思われます。ただ、外にゴージャスランチ、前にラッキーライラックというポケットに飛び込むことを意味しますので、勝負どころで進路がなくなる可能性を含んだ選択にもなります。横山もそう簡単に進路を開けないでしょうしね。しっかり被せてくることでしょう。

並みの上位人気馬であれば取り得た選択かもしれません。が、ルメールはセーフティなポジショニングに終始することを決めていたように思います。それだけ2冠牝馬の力を信じていた、ともいえるでしょうか。結果、4コーナー手前での不器用な大回りにつながるわけですが。ルメールのリスクの取り方が垣間見える瞬間でした。3冠を成し遂げる意志、という方がこちらの心は踊りますね。

直線の手前替えは常識の範疇?

直線に向いてからのフォームはダイナミックでしたねー。プラス体重は筋力アップ分を含んでいることが窺えます。その凄味は「考えるな、感じろ」でなく「読むな、観ろ」でよいかと思いますね。

直線での頻繁な手前替え、今回は見られませんでした。ちょうど並走するサラキアを交わしたあたりで左→右のスイッチが1回のみ。その後、少しインに寄っていくのですが右鞭で補正、まっすぐ走ってそのままゴールインでした。

その右へのスイッチの直前にルメールがハミをかけ直しているんですよね。どんなお約束ができていたか素人には推察する術がないのですが、右鞭でちゃんと進路が補正されていることからも、あの末脚を披露しながら、鞍上の指示にしっかり呼応したアクションであったことが見て取れます。

オークス時の頻繁な手前替えを自分は未熟さ(未完成さ)と見て取っていたのですが、この直線の所作は未熟と呼ぶべきものではないのでしょう。きれいで圧倒的な末脚でした。

強いて言うなら。目標となるミッキーチャームは斜め前方。周囲の馬は全部交わしてしまいましたから、鞍上の加速の指示に応えるため、アーモンドアイ自らが目標をロックオンしてそこに目掛けて手前を替えて寄せていった、という見方もあり得るかもしれません。右手前なら左後ろで加速しますから、力の向きとしてインへ切れ込むには妥当な選択です。

…この妄想が的を射ているならアーモンドアイ、本当に心身とも磨きあがったアスリートと表現してよいように思いますが、真相はどうでしょうね。

なお、桜花賞オークスの際に手前替えについて詳述されていたブログを覗いてみましたが、投稿がないようでちょっと残念。秀逸な分析でしたので今後更新があれば目にしたいと思います。オークスの記事を書いた際にリンクを載せていますので、興味がある方は。

keibascore.hatenablog.com

川田の逃げはほぼ完璧

レースの上がりが35.2、自身の上がりは35.4ですから、発表された数字からは、川田のリードがレースを支配していたことが窺えます。アーモンドアイ以外は2馬身以上退けているわけですからね。

2ハロン目の10.9で競りかける馬を制することに成功したことが大きいでしょう。それを可能にするだけのフィジカルであったことも、それにチャレンジする鞍上の胆力も評価されるべきだと思っています。決して人気薄の前残りではないですね。

パドックで見て取った仕上がり。もう半年くらい時間があって、順調にレースとトレーニングを重ねられていれば、先行脚質と相まって逆転の目まであったかもしれない、と思っていました。前面に出る気合乗りも同様ですね。

もうひとつ馬体を膨らませることができて、心身共にどっしりしてくるなら来年が楽しみ、と改めて思っているところです。

レース後のパッと思い出したのは、ディープインパクト菊花賞。あちらも3冠がかかるレースでしたが、他馬を寄せ付けない逃げの手にでたアドマイヤジャパンをゴール手前で差し切るディープインパクト、という構図は今回の1、2着とよく似ています。

逃げ馬が最高に上手く運んでいる点も似ていますね。その点でいえば、いまいまの川田将雅の実力の裏返しともいえるのでしょう。

カンタービレは熟練の業がなせる3着

勝負にいった3着ですね。こちらはオルフェーヴルの3冠阻止に挑んだウインバリアシオン、その菊花賞での安藤勝己の戦略に似ていたと思います。まともに競っては勝ち目がない、のであれば後方待機からの一発に賭ける、という戦略。前走ローズSはスローで逃げながら直線入口から11.0-10.8と抜群の切れ味を見せましたから、この切れをレースのどこで使うかという発想だったでしょうね。

先行馬が揃っていて、内枠発走、外には断然の1番人気の差し馬。自身の切れを最大限発揮しつつ、あわよくば逆転までというシナリオだったでしょう。武豊が選んだこの待機策、お見事と受け止めています。

裏を返すと、予めアーモンドアイとの実力差を含んだ作戦ですから、結果的にはトリプルティアラの凄さを強く引き立たせた、とも言えます。何より、上がり最速はアーモンドアイですからね。


メジロ牝馬3冠優勝レイを前にいろいろ思う

週が明けて菊花賞ウィークの木曜、なんとか代休を取得して競馬博物館に向かうことができました。「メジロ牧場の歴史~“白と緑”の蹄跡~」展が開催中、2階のギャラリーにはメジロ歴代のG1勝利時のレイが並べられていまして、メジロラモーヌの3冠レイも揃いで展示されていました。撮影OKでしたので、撮った写真をツイートしております。

 

1986年当時は旧3冠、秋華賞が設立されたのが1996年で、ちょうど自分が競馬を始めた年になります。新しいものには反発が付き物ですね、直前の春から秋口にかけては、京都内回り2000mで牝馬限定のG1を施行する意義は?といった議論が雑誌、新聞では様々に飛び交っておりました。ビギナーだった自分は変な先入観なしで丹念に熟読していたことを覚えています。年季のはいった感慨を持ち込みながらレイを眺めておりました。

最初の数年は荒れるG1としてのイメージが先行していましたね。第1回のファビラスラフインNHKマイルカップ大敗後からのぶっつけかつ乗り替わり、その後のジャパンカップ2着で評価を上げる前でしたから人気はなかったんですよね。

ブゼンキャンドルティコティコタックと、ベテランファンはこの名前の羅列だけで一晩飲み明かせますよね。いずれも人気薄の激走でした。その後は人気を背負ってしっかり勝ち切る馬が多いですよね。G1勝ちが秋華賞のみ、という馬は少ないのではないでしょうか。歴代の勝ち馬のこの安定感がレースの評価と定着に大きく寄与しているものと、改めて振り返ってみたところです。

ジョッキーが京都内回り2000mのG1を攻略してきた歴史でもあるのでしょう。アドマイヤグルーヴウオッカブエナビスタは差し届かず、ティコティコタックブラックエンブレムアヴェンチュラは好位のインでじっと構えるアドバンテージを示しました。突っ込んだ前傾ラップの年もあれば、前半スロー過ぎて逃げ馬と勝ち馬以外みんなスポイルされてしまうような年もありました。ジェンティルドンナは後者かな。

外枠から先行して、終始3、4番手から直線入口で先頭に並びかけて、後続を突き放す。最も安定感があるレース運びだったのは、実は第1回のファビラスラフインだったかもしれません。まだの方はぜひ映像で。

のちのお手本となるレースはすでに第1回で示されていたと考えるなら、平成最後の秋華賞当日のレーシングプログラム、その裏表紙が第1回の人馬だったのは、とても粋な選択であったなぁ、などと後からじわじわと感じ入っている次第です。

…レース回顧より長いですねw


最後に

トリプルティアラ・アーモンドアイは、どうやら予定通りジャパンカップに向かう様子。個人的にはまずいんですよね。サトノダイヤモンドとアーモンドアイ、本命をどうしたらよいものか、今年最大の難問になりそうです。

ええ、皆さんアーモンドアイと仰るのでしょう。違うんですよ、予想と応援をあえて混ぜるから悩ましくも素敵な難問になるんですよ、みたいなことを周囲に話すと好きにすれば、というリアクションがいただけるので、はーい好きにしまーすとめんどくさいベテランファンが仕上がるわけですよw

多分にファンタジーを伴うわけですが、未知の対戦を前にわくわくできるのはファンの特権ですものね。ダノンプレミアムとワグネリアンが回避するまでの秋の天皇賞は、それはカオスな期待に包まれていましたから。結局スワーヴリチャードじゃないのというリアリズム(謎)も込みでの、11月末までの期間限定「贅沢な悩み」をあえて堪能しようと思っております。