ジョアン・モレイラ、日本の騎手免許を通年取得すべく、受験の準備にはいっているようです。
親日、いや親日本競馬というべきでしょうか、これまでもそういったメッセージは様々に目にしていましたが、さすがに一報に触れたときは驚きました。いくつか記事を追いましたが、その経緯も納得するところ。短期免許での参加ではなく、本気で日本競馬に腰を据えるようですね。
現時点で報道されている概要
ざっと箇条書いておきます。
- 香港の免許は今期で返上、更新しない
- 今夏は短期免許を取得
- 例年のスケジュールだと一次試験は9月、二次試験は来年1月
- 試験に不合格だった場合はブラジルで騎乗
- 日本語の勉強は1年以上前から取り組んでいる
情報収集してみました
モレイラの経歴等、詳細は以下のブログ記事がよくまとまっておりますのでご紹介。Nathanielさんはいつもきっちり下調べを経た記事をまとめていらっしゃるので、特に追いかけ損ねた出来事を読むにはとても助かっています。
モレイラ騎手・日本騎手免許受験とこれまで : Nathanielの競馬ブログ
モレイラ本人のインタビューも見つけました。昨年末の香港国際競走の前。この時点では移籍については消極的なコメントをだしていますが、まぁ、準備をしているよとは言いにくいでしょうからね。
英語の記事では、当初免許の更新を申請していたこと、今シーズンの騎乗馬の優先順をうまくつけられなかったことに本人が触れています。
香港所属のジョッキーへの国外での騎乗制限については以下。
HKJCのリリースを読むと、参加可能な国外レースを制限、海外での騎乗は1ミーティング分の騎乗停止、またペナルティ施行のルールが異なる国での騎乗が事実上制限されることが記載されています。だいぶ不自由ですね。
Revised policy for jockeys to ride overseas – Racing News – The Hong Kong Jockey Club
日本競馬への評価と、香港での騎乗に消極的な要因が重なったこと、これがこのタイミングでの「移籍」を決断させたと推察されます。
免許取得の難易度は?
なにより日本語がまだまだという状況でしょう。二次試験は苦戦するかもしれませんし、そもそも日本語を要件に含めるべきなのかという議論も目にいたしました。
個人的に、デムーロとルメール、2名に免許を交付した状況とは異なっていると受け取っています。2名とも、日本への通年免許取得はよほどのことがない限り、そのまま日本で乗り続けることを意味していたでしょう。
モレイラの決断に至る経緯は、日本での騎乗に不自由な条件が重なった場合、再び移籍について検討することになる可能性を感じさせます。これが許容されるのかがひとつのポイントになるかもしれません。日本への移籍と日本人化はだいぶ異なる価値ですので。
公正確保、参入ハードルの不用意な低下も避けたい状況と推察します、一方でジョッキー不足への対策というテーマも。実際はこのあたりも踏まえて「総合的に」判断するのかなと思っていますが、どうなるでしょうね。
制度設計と競馬の魅力
実績があるとはいえ、国外のジョッキーが日本へ移籍する間口は相当狭いのが現状。変に参入障壁を下げると、ファンの観たいものとは異なる競馬が展開されてしまう恐れはありますのでね、いい意味で文化の差を温存するのは肝要と思っています。にしてもハードルは高いですよね。
いまいま、自分はどちらかというとジョッキーの参入障壁より、外厩制度の整備が先決ではと思っています。が、うーん、例えばライセンスの交付条件は緩やかにしつつ、移籍後数年はペナルティを厳しく取るなど、ジョッキーライセンスの制度から変化を求めることも可能でしょう。
レースの魅力を担保するのが制度設計の要点と信じますので、このあたりは既存ルールの恩恵うんぬんより、提供できるコンテンツの質を上げる仕掛けつくりに徹底してほしいと願うところです。
より魅力的なレースの提供。それを志向した結果としてのジョアン・モレイラ移籍なら、そりゃあもう大歓迎。この稀有なテクニックを持ったジョッキーにあやかるのではなく、活かせる制度設計と運用をお願いしたいですね。いわゆるアンカツルールのような今回向けの「モレイラルール」も、状況によってはありかもしれません。
最後に
ひと言でまとめるなら、楽しみ、ですね。もし実現するのなら、肉体のピークを過ぎて乗り方がどう変わっていくのか、じっくり見ることができるのも興味深く。…衰える様を見たいとはちょっと下世話ですかね。でも、モレイラの特徴はあの圧倒的な上体の筋肉でコントロールするところにあると思っていますので、筋力が落ちてきた際の工夫がどうなるのか、そこが気になります。マニアックであることは否定しませんよ。
これからの推移がどうなるか、ひょっとしたら着地の難しい問題になるかもしれませんが、期待をもって続報を待ちたいと思います。