more than a SCORE

1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

2023 Saudi Cup Day

今年もサウジアラビアで日本馬が躍動しました。パンサラッサの快挙がありますから、昨年を上回ったと言うべきでしょうね。深夜に大興奮でした。

 

グリーンチャンネルWebが中継を無料放送にしていましたので、パソコンをテレビにつないでの自宅観戦。ばっちり夜更かしになりましたが、快挙を目の当たりにしたこともあり、4時間の中継あっという間でした。現地は宗教上の理由で馬券販売なしですが日本でもなかったんですよね、事情に明るくはないのですが叶うなら買いたかったですね、馬券。

 

キングアブドゥルアジーズ競馬場とトラックコンディション

ジャパンスタッドブックインターナショナルのサイトに競馬場の紹介ページがありました。

www.jairs.jp

キングアブドゥルアジーズ競馬場、ダートは一周2000m、直線は500m。サウジカップはワンターンの1800mになりますね。一方の芝コースはダートの内側、一周1800m、直線は438m。いずれも整地されていてフラットなコースです。

ちょっとだけ苦言を。JRA-VAN Ver.worldの以下のページ、キングアブドゥルアジーズ競馬場の解説はほしいところです。頑張ってみてください。

world.jra-van.jp

 

芝のコンディションについてはデアリングタクトが回避したネオムターフカップが参考になりました。2100m、モスターダフが2番手追走から直線入口で先頭、そのまま押し切っていました。インから3列目より外を回ると距離が長いほど厳しいのかな。

それだけ芝のコンディションががよく、それを利用する先行馬がペースを握って、前にいった馬が止まらない、という傾向がでやすいように見えました。

 

ダートコースは後述するサウジダービーでデットーリがインを避けながら3コーナーに進入。インが重たいという判断だったのでしょう。ただ距離を問わず先行馬が残る傾向、差し切りというレースはそれこそスプリント戦のみでした。スピードがでるコンディションという意味では芝ダートを問わなかったという印象です。

 

「Three Legends」と福永祐一ラストラン

そうでした、レース週には「Three Legends」としてデットーリ、モレイラ、福永の3ショットが実現。3人とも今年で引退ですから何とも印象的。

 

個人的にはここに福永が並んでいることが不思議な感覚。このあたりは引退を受けて別の投稿で取りまとめたいと思っています。サウジアラビアでキャリアを終える日本人ジョッキーは初、これも今年の見どころのひとつでしたね。

 

日本調教馬の結果

サウジカップ公式サイトの結果はこちら。

thesaudicup.com.sa

JRAのリリースはこちら。以下、書き出しておきます。

www.jra.go.jp

1351ターフスプリント(G3)

1着 バスラットレオン(牡5 栗東・矢作) 坂井瑠星
5着 レシステンシア(牝6 栗東・松下) R.ムーア
9着 ラウダシオン(牡6 栗東・斉藤) B.ムルザバエフ
10着 ソングライン(牝5 美浦・林) C.ルメール

レッドシーターフハンデキャップ(G3)

1着 シルヴァーソニック(牡7 栗東・池江) D.レーン
7着 エヒト(牡6 栗東・森) 川田将雅

サウジダービー(G3)

3着 デルマソトガケ(牡3 栗東・音無) 松若風馬
5着 コンティノアール(牡3 栗東・矢作) 坂井瑠星
9着 フロムダスク(牡3 栗東・森) 川田将雅
12着 エコロアレス(牡3 栗東・森) 福永祐一

リヤドダートスプリント(G3)

3着 リメイク(牡4 栗東・新谷) 福永祐一
4着 ジャスティン(牡7 栗東・矢作) 坂井瑠星
5着 ダンシングプリンス(牡7 美浦・宮田) D.レーン
6着 リュウノユキナ(牡8 美浦・小野) 柴田善臣

サウジカップ(G1)

1着 パンサラッサ(牡6 栗東・矢作) 吉田豊
3着 カフェファラオ(牡6 美浦・堀) J.モレイラ
4着 ジオグリフ(牡4 美浦・木村) C.ルメール
5着 クラウンプライド(牡4 栗東・新谷) D.レーン
7着 ジュンライトボルト(牡6 栗東・友道) R.ムーア
11着 ヴァンドギャルド(牡7 栗東・藤原) M.バルザローナ

 

1351ターフスプリントはバスラットレオンの逃げ切り

坂井瑠星、やりました。バスラットレオンの特徴と馬場コンディション、そして坂井瑠星の諸所の判断が見事に重なりました。

序盤の先手争い、がほぼなかったことが勝因のひとつといえそうです。スタートはレシステンシアの方がよかったのですが、押して押してハナを取り切りました。レシステンシアと枠が逆だったらこの結果ではなかったかもしれません、でもこのタラレバは野暮でしょうね。

海外遠征で諸外国のトップジョッキーとの力量差を思い知った、というコメントは馬好王国に出演した際だったでしょうか。具体的なことを語る尺はありませんでしたが、遠征していればこその体験→経験が増えるはずで。いま最も海外遠征のチャンスを得る若手ジョッキーになっていますね。バスラットレオンでバーイードに立ち向かった経験もまた、この勝利につながっているのでしょう。

 

福永の引退が強くフォーカスされていますが、レシステンシアもまたラストレースだったんですよね。

戦歴を振り返ってみましたが、やっぱり1400がベストというスピードレンジだったのかなという印象。すでにその認識でしたけどね、改めて。2021年の阪急杯でインディチャンプを完封してのレコード勝ち。あれがレシステンシアらしさのように思っています。

2度の香港遠征を経てサウジアラビアでキャリアを終えた2歳牝馬チャンピオン。デアリングタクトが相手でなければ桜花賞馬だったでしょう。お疲れさまでした。

 

後方から進めたラウダシオンとソングラインは、府中の開幕週のようなスポイルにみえました。インかつ前でないとノーチャンス。ソングラインは昨年とのコントラストが残酷ですが、今年のほうが調子がよかったという点を疑う必要はないように思っています。

 

レッドシーターフハンデキャップはシルヴァーソニックの先行押し切り

ダミアン・レーン、もってきましたね。インをキープして直線で外に持ち出すというのは得意なパターンという認識。オーストラリアのコース形態に故があるようにも思いますが、今回の運び方もまさにインをキープ。ひとつ前で進めていたデットーリの手ごたえが4コーナーで怪しくなるのを確認して、インからパスしての直線粘り込みでした。

 

池江師のインタビューはプライドがにじみ出ていましたね。オルフェーヴルの仔で海外遠征して結果がだせたことに大きな達成感を得ているようでした。ステイゴールドでドバイ遠征した際には父のアシスタントだったと強調していたあたり、この血統を引き受けてきた矜持がしっかり見えましたね。こうした場面だからこそ表現された、その美しさを感じた次第です。

昨年の天皇賞春は競走中止カラ馬のままタイトルホルダーと併走してゴール、そのまま外ラチを飛び越えて転倒した姿が思い出されます。あの馬がこんなに鮮やかに海外重賞で結果を残すとは。

次走はドバイを回避して天皇賞春とのこと。タイトルホルダーと再戦になりますね。

 

リヤドダートスプリントはエリートパワーの完勝

強かった。ブリーダーズカップスプリントの勲章は伊達ではありませんでした。ダンシングプリンスが逃げられず、ジャスティンが内枠から主張して先頭に立ちましたが、先行勢は直線に向いて苦しくなりました。とはいえリメイクも追走に苦しんだ格好。先行も差しも苦しい中をエリートパワーは突き抜けていきましたからね。

戦歴は以下で。しばらくダートスプリントのチャンピオンであるかもしれません。この後はドバイ転戦でしょうか。

world.jra-van.jp

そしてリメイク騎乗の福永祐一はこれが現役ラストラン。無事に終わったことが何よりでした。そして今後につなげられるリードだったという印象。グリーンチャンネルの中継内でレース後のインタビューが流れていましたが、ジョッキールームでは祝福を受けていたようですね。

リメイク自身、あの馬場で差し切るにはもうひとつパンプアップする必要があるように思いました。3歳の1年でレース数つかっている方なんですよね。それも含めてラニ産駒の成長力に期待したいです。

 

サウジカップはパンサラッサの逃げ切り

パンサラッサがやってくれました。馬場バイアスと最内枠、自身の逃げの手にこだわるしかなくなっていたと推察しますが、かえって迷う材料がなくなってよかったというほうが妥当なのかもしれないですね。

スタートから積極的に行ったのはジオグリフでした。外枠からかなりダッシュをかけていったパンサラッサのすぐ外を追走、最後まで交わすことができませんでしたがルメールの戦略はズバリはまっていました。

クラウンプライドも前半深追いしないことでラストまで脚色をキープできた模様、カフェファラオは3コーナー手前でインにグッと切れ込む姿が印象的でした。上位勢それぞれに見せ場がありましたね。

 

公式のレースラップが見当たらないのですが、TLの分析を見ている限りはかなりの前傾ラップだった模様。中継時の1200m通過ラップが1:11.17で走破タイムが1:50.80ですので、計算上ラスト3ハロンは39.63になります。…大井でよくみる上がりですね。

昨年のエンブレムロードが1:50.52、一昨年のミシュリフが1:49.59。聞き及ぶ限り、だいぶダートのコンディションに変更が加わっているようですが(中継で木南さんと合田さんが触れていましたね、昨年は目に見えるほどウッドチップが敷かれていて、今年はその量が減っているとのこと)、一昨年の1200m通過タイムは目視した限りコンマ2秒と違わない模様。

レーティングもエンブレムロードが118、ミシュリフが120、パンサラッサの天皇賞秋でのレーティングが120ですから、過去2年と遜色ないレベルにあったものと理解しています。

 

個人的には、4コーナーでテイバの手ごたえが怪しくなり日本馬が上位を占めながら直線に向いてくる時間が、それはもう何とも言えない高揚感に満ちていました。海外遠征で、ここまで日本馬の存在を示すことができるようになったのかという。競馬を推し続けてよかったという感慨ですね。

 

パンサラッサは歴代獲得賞金3位にジャンプアップ

凱旋門賞を制した種牡馬がそのまま欧州リーディングサイアーになるのを思い出しました。この勝利でパンサラッサの獲得賞金が一気に日本馬歴代3位になるとのこと。サウジアラビアの賞金、すごいですね。

news.netkeiba.com

レートの計算はフランスギャロが年始に設定した1ドル=131・865円で行う取り決めのようで、それに従った結果、歴代3位になるのですね。

 

まだそのルール適用が明確に認識されていなかった時点での記事が以下。netkeibaが歴代獲得賞金ランキングを掲載しています。

news.netkeiba.com

そちらから引用してパンサラッサを含めた歴代5位までを並べてみました。

1位 アーモンドアイ 19億1526万3900円
2位 キタサンブラック 18億7684万3000円
3位 パンサラッサ 18億4466万3500円
4位 テイエムオペラオー 18億3518万9000円
5位 ジェンティルドンナ  17億2603万400円

 

日本のクラシックや七大競走を経ずにランキング上位に来る時代が来ているという実感。これまでの日本競馬の積み重ねを否定するつもりはありませんが、レースの価値が賞金によって支えられる側面はやはりあるなぁと感じます。

 

馬場適性とコース適性への判断

サウジカップを走った6頭のうち、パンサラッサ、ジオグリフ、ヴァンドギャルドの3頭は初めてのダートG1挑戦となりました。というより、ダート経験があるのがパンサラッサのみ、それもオープン1戦だけですから、事実上3頭とも初ダートがサウジカップだったと言っていいと思います。

一方、中継内で木南さんが指摘されていたワンターンの1800m。限りなくそれに近しい条件で結果をだしていたのは、天皇賞秋で2着していたパンサラッサ、フェブラリーSを連覇しているカフェファラオ、調子が上がらない中で共同通信杯を2着したジオグリフあたりでしょうか。

 

ヴァンドギャルドキックバックがつらかったようですし、ジュンライトボルトは馬場が合わなかったと敗戦コメント。チャレンジは様々な巧拙を明らかにしましたが、キングアブドゥルアジーズのダートはおおむね芝G1のスピードが要求されるコンディションということなのでしょう。

それを読んでの海外遠征、リスクとリターンを秤にかけて1着賞金1000万米ドルはチャレンジに値しましたね。

 

どうやら、芝かダートかという単純な軸では語れない適性があるように思っています。パンサラッサが押し切ったパフォーマンスからして、トップスピードに駆け上がる加速力よりスピードの持続力に鍵がありそう。

そしてキーワードはキングカメハメハ。パンサラッサはロードカナロアですし、ジオグリフとクラウンプライドは母父キングカメハメハ。このあたりの符合は望田潤さんも指摘されていますね。

blog.goo.ne.jp

 

一方の北米馬。今年のペガサスワールドカップを制したアートコレクターは昨年のサウジカップで惨敗、今年は始めからサウジカップに登録がなかった模様です。反対にパンサラッサの2着に差し込んできたカントリーグラマーはブリーダーズカップもペガサスワールドカップもスルーしてサウジカップを狙ってきました。

ある程度の期間ピーキングをし続ける難しさがあるでしょうから、上記に挙げたすべてのレースを転戦するのは現実的ではないでしょう。

北米ダート馬も一概にダート馬場で高額賞金だからサウジカップ、と判断してくるわけではないようです。レースの知名度種牡馬入りにあたってのサウジカップの評価という意味合いも大きいでしょうね。…フライトラインだったら関係なかったかな。

 

サウジカップとはこういうレース、という評価が固まるまではもう少し時間を要するものと思われます。その評価が固まる前にチャレンジが成功した、ということなのかな。日本の陣営のチャレンジ、お見事でした。

 

最後に

日本馬の評価がグッと高まったなか、サウジからの転戦組と日本からの遠征組がドバイワールドカップデーに向けて続々と参戦を表明しています。

 

陣営がギリギリまで判断を引っ張ったレモンポップはゴールデンシャヒーンを選択。リメイク、レッドルゼル、ジャスティンとの対決になりますね。

ドバイターフにはドウデュース、ドバイシーマクラシックにはイクイノックス、ドバイワールドカップにはジオグリフ。前年の皐月賞1、2、3着馬が揃ってドバイへ遠征するというのは壮観のひと言。

ドウデュースはダノンベルーガやパンサラッサと、イクイノックスはシャフリヤールと、そしてジオグリフはサウジカップ組に加えてヴェラアズール、テーオーケインズと対戦することになりそう(パンサラッサはこちらかもですね)。目標とするレースの変化、スタンダードの変化と受け止めるべきかもしれませんね。

 

日本のG1の空洞化といった意見もあるようですが、きっと遠征馬が減ったら今度は海外遠征に打って出るべきだといった声に変わるのだろうな、などといじわるな邪推をしております。活躍の場をグローバルに求められるご時勢。その中で楽しみ方を見出す方がファンとしてはポジティブだろうと感じているところです。

 

さて、今日は福永祐一の引退式でもらいまくっていました。追って言葉にまとめたいと思っていますが長くなりそうですね。。。これまでのあれやこれやを思い返しながら、しっかり思い出語りをやっておきたいと思っています。よろしければお付き合いください。