more than a SCORE

1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

3歳ダート三冠競走の創設と『日本競馬の「国際化」を可能な限り言語化してみる(4.5)』

ようやくというべきでしょうか、3歳ダート路線にまとまった指針がでましたね。

3歳ダート三冠競走の概要

NARの発表はこちら。

www.keiba.go.jp

要点を箇条書きするとこんなところでしょうか。

実施は再来年、2024年からとのことです。

NARの記者会見を取り上げた記事も見つけました。

news.yahoo.co.jp

リンク先の記事が消えてしまった時のため、一部抜粋しておきます。

2、3歳ダート路線は芝に比べて競走体系の整備が不完全。現状では2歳12月の全日本2歳優駿以降、地方では3歳5月の兵庫チャンピオンシップまでダートグレード競走の開催がない。JRAも6月のユニコーンSまで3歳ダート重賞の実施がなく、半年近い空白期間が生じている。この問題を解決すべく地方競馬主催団体とJRAは20年に研究会を発足。ダート適性のある馬の活躍の場を増やすことを目的に協議を重ねてきた。

まずは国内独自の格付けであるJpn1でスタートするが、将来的には国際G1への昇格も目指すという。

まずは歓迎

3歳春のダート路線に明確な目標ができたことはひとつ喜ばしい状況と思っています。正直2歳から3歳春まで中央開催でのダート重賞はユニコーンSのみですからね。マカニビスティーが矢作師のアイデア(苦肉の策ですね)で南関に移籍し、適性のあるレースを求めたのがなつかしく思い出されます。

コロナ禍でのネット投票の売上増加、交流重賞にとどまらず地方重賞でも売上レコードが珍しくない状況ですものね。「ウマ娘」からの新規ユーザー流入も見逃せません。ドネーション一口馬主の増加の一因ではあるでしょう。

上記研究会は20年発足ですから、それ以前から議論は進んでいたわけですが、ここ1、2年の動向は背中を押す要因だっただろうと推察しています。

地方競馬場からJpn1を狙える機会の増加

古谷さんの記事では地方競馬振興の観点で前向きにとらえるべきとの見解が。現状のハードルは高いと思われますが、南関東以外の所属からJpn1を狙える制度設計は重要と考えます。

news.yahoo.co.jp

今後、3冠に向けて各地方競馬場でトライアルなど路線の整備が進むことと思います。その準備に1年は要するという判断が、2024年から実施という結論を導いているものと理解をしています。オーナーシップという視点からは、ダート3冠に向けて様々に選択肢が増えることになるのでしょう。今後の調整次第ですね。

しかし何より、大目標を先行して決めた手順のよさを評価すべきだと思っています。中央競馬の番組編成が飽和している中で(このあたりは須田鷹雄氏が以前の一筆啓上で議論していた記憶あり)、大井のクラシック体系を格上げする形で全国のダート路線の目標となるレースを設ける判断。賢明という印象です。

国際グレードの前段階あるいは調整弁としてのJpn

これまでのJpnの格付けは、国際グレードの条件を満たさない(交流)重賞になされているという印象が強くありました。実際は違う事情や思惑があるかもしれませんが。

「国際格付けに条件が満たない」「でも興行面で影響がでないようファン向けに分かりやすい提示をしたい」という、グレードに対する矛盾した状況に対処したい思惑がJpnが誕生した背景であったのだろうと推察しています。

今回の羽田盃東京ダービーのJpn1化はそれとは異なり、交流重賞化と将来の国際グレード付与(G1化)の布石という、国際グレードの前段階、準備段階としてJpnを利用しているという解釈が成り立ちそうです。

ダート競馬という経済圏をしっかり分厚くするまで国際格付けの厳格さから外れて興行を執り行う。名実ともに、というきれいな形ではありませんが、今回のJpn運用は「名」を保留して「実」を取る、現実的な判断があるように思っているところです。

…なにぶん、外野のいちファンの見解ですからね。多分にピントがずれている可能性がありますが。捉え方のひとつということで読み進めていただければと思います。

日本競馬の「国際化」を可能な限り言語化してみる(4.5)

自分自身が懐かしくなっているのでだいぶダメなのですが。以前に日本競馬の国際化について言葉数の多い議論を進めておりました。(1)~(5)までで完結させるつもりが(4)で止まったままになっておりまして。以下、以前の投稿です。それぞれ長いです。

日本競馬の「国際化」を可能な限り言語化してみる(1) - more than a SCORE

日本競馬の「国際化」を可能な限り言語化してみる(2) - more than a SCORE

日本競馬の「国際化」を可能な限り言語化してみる(3) - more than a SCORE

日本競馬の「国際化」を可能な限り言語化してみる(4) - more than a SCORE

 

続きとなる(5)で私見を述べようと思っていたのは以下の内容でした。

  • 国際標準へ適合しない、という方針は有効か

主に国内ダート競馬のローカルグレード(Jpnや各競馬場の独自グレード)はすべからく国際格付けに適合すべきなのか、というテーマですね。

現状、ダートのG1はフェブラリーSチャンピオンズカップ、そして東京大賞典の3つのみ。その他の「交流G1」は国際格付け的には「リステッド」。個人的にはこれを性急にG1化することにどれくらいメリットがあるのか。

当時から自分は、日本のダート競馬が国際的にかつ実質的に評価されてから格付けを志向する、が程よいのではないかと考えてきました。

今回の3冠整備はこの自分の見解に近しいスタンスと見えていまして、腑に落ちやすかったところです。…言葉数を増やして(5)を語るのがよいかもですが、なかなか時間が、という言い訳。。。

最後に

並行して、3歳牝馬ダート路線にどう改善策が取りうるのか、検討を進めてほしいと思いつつ。まずは3冠が機能していくことを期待したいと思います。

成功のポイントはこれから、中央馬の優先出走権や全国の「Road to 羽田盃」「Road to 東京ダービー」がどう整備されるのか。それによって盛り上がり方は大きく変わるでしょうから。難しい調整になるかもしれませんね。